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彼女から聞いた話は確かに大体は先ほどテレビで報道されていたことと変わらなかったが、
「んでもって、いくら記憶がないからといって、その現場の状況と沙希ちゃんの証言から加害者側は確実に罪に問われるらしいよ」
これを聞いてとりあえずは安心した。あれだけのことをされて『覚えてないから無罪です』では済まされない。
真琴からの話を聞き終わったところで、彼女が興味ありげな顔でこちらを見てくる。
「ごめん、質問…かな?」
真琴が頭をコクコクと振り、目を輝かせながらこちらを見てくる。
「ねぇねぇ、結局アンタの能力ってなんだったわけ?」
彼女の眼の輝きがどんどん増してるような気がしている。
言い逃れはできないと思い、とりあえず声の主に話しかけてみる。
(この能力は人前で見せていいものなのかな?)
『好きにしろ、それはオマエが決めることだ』
(わかった、ありがとう)
胸元の星空のような結晶を取り出し、右手で握りこむ。
「『光輪の加護!』」
その掛け声とともに、指輪から、金色の光が放たれる。
それが猟の全身を覆い、四肢に分散されていき、それぞれ3つの光の輪を形成する。
いつの間にか『可視化の片眼鏡』を発動させていた、真琴に疑問の表情が見える。
「アンタの中…何がいるの?」
そこまでわかるのか?などと思い、
「順を追って説明する」
とりあえずこっちの能力の説明を開始する。
「ああ…うん。これだけ?にしては周りのエネルギーを消費しすぎてるような…」
と真琴がぶつぶつとぼやいている。
これは椋には理解できない世界なのでとりあえずスルーしておく。
「で、これで何ができるの?」
的確な質問だが、説明しても胡散臭いと思ったので、とりあえず実践に映る。
ゆっくりとイスから立ち上がり、小さく右足で一歩踏み込む。
「えっ……?」
真琴の間抜けな声が小さく病室に響いた。
真琴からはどう見えたのだろうか?
今、椋は真琴の両眼を手で覆っている。
この足側の能力は、移動速度拡張ではない。移動能力拡張である。椋は踏み込んではいるが、その後走ったりはしていない。スライドするように、足は動かさずとも、勝手に目的地に届けてくれる。
一度座標を選択したら、その座標に着くまで、椋は障害物をすり抜けられる。そしてこれに移動速度拡張の能力が付加されている。
周りから見たら、完全に瞬間移動だろう。
「どう…なってんのか!説明しなさいよっ!!」
と真琴が目の前にある椋の両手を女子とは思えないほどの握力で握ってくる。
「痛い!痛い!ギブギブ!」
と、とりあえず手を放すように催促する。
そして、椋自身が知っているこの能力について、大体の説明を始める。




