表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/414

 2062年 3月5日


 この日は、椋にとって中学校最後の授業の日だ。

 こうして毎日朝ギリギリに起き、一人でサッサと朝食をすまし、急いで玄関の扉を開けるのである。

 いつもの決まった時間の電車に乗り、いつもと同じように本を読み、いつもと同じように学校に着く。

 いつもと何も変わらない。自分が学校で受ける仕打ちさえも…

 

 

 遂にこの日が来たのである。

次の日から卒業式までは自由登校であるため学校に行く気はない。

 そもそも、今日でさえ学校になっていきたくない。待っているのは残酷な現実だけだからだ。

 しかし椋には学校に行かなければならない理由がある。

 通っている学校、私立聡明中学校では椋の母親である辻井京子ツジイキョウコが理事長を務めているからである。

 理事長の息子が不登校とあらば、何かと面倒なことになるからと、半ば強制的に学校に行かされるのだ。

 「そんなに自分の立場が大事かよ!」

 と椋が問い詰めたところ

 「自分の立場以上に大切なものなどあるの?」

 と1秒足らずで帰ってきたほどである。

 

 京子は自分のことを腹を痛めて産んだ子供などとは思いたくないらしい。

 その証拠に、物心ついたころから椋は京子のお荷物として扱われてきた。与えられるの金銭のみ。

 もちろん愛情なんてものはもらったことがない。

 椋はそんな母親が大嫌いである。しかし親に頼らないと生きていけないのもまた現実だ。

 父親は、まだ幼いころに妹を連れてどこかへ消えた。

 記憶には残っていない。忘れても問題ないと思っているのだ。

 


 椋は自分がいじめを受ける理由も、母親から邪魔者扱いされる理由もしっかり自覚している。

 皮肉なことにそれぞれの理由は全く同じであり、現代においては最も致命的なものでもある。

 

 少年、辻井椋は能力がまったくと言っていいほど使えないのだ。


 







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ