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真琴がやはりというのかなんというのか、胸を躍らせています的な表情で鼻を何度もならしている。
「やっぱ楽しんでるよな?」
「んなわけないでしょ!こっちは学校休んでまでこっちに来てんの!」
ものの1秒足らずで否定が入る。
「じゃあついてこなくても……」
「るさいわねぇ!どうせアタシがいないと見つけられないんだから仕方ないでしょ!」
返せど返せどボコボコだ。彼女にだけは口喧嘩で勝てる気がしない。
まぁなんにせよ来てしまったからには前進あるのみだ。
彼女が帽子と眼鏡を装着したのを確認するとともに宣言する。
「行くぞーッ!!」
体育会系のスタイリッシュな掛け声に対し
「お~!」
と結構ノリノリな感じで真琴が返してくる。
どこの結団式だよ……。
「やっぱり真琴、お前楽しんでるだろ……」
○~○~○~○
白虎第一普通校舎というだけあって第二もあれば第五もある。それがどの寮も十まで続いている。
単純に○○寮第×寮に住んでいる生徒のHR教室は○○第×普通校舎となるシステムだ。言っても進級後はほとんどが選択授業となり始業と修業以外にこの教室を使わなくなる生徒もいるということなのだが、1年生にそれは適応されない。
SHRが始まるまでもうさほど時間がない。急いで移動し、校舎内へと侵入する。
OLのマップ機能を使い、とりあえず一年生のHRへと向かった。
引け腰で歩く男子に、ステップを踏みながら学園生活エンジョイしてます的雰囲気を漂わせる女。実にアンバランスな二人がようやく1年のHR教室に到着する。
「お前らが授業見学の生徒か?」
不意に後ろから声がかかる。野太い男性の声。声だけで判断できるほどに大柄だ。
ゆっくりと声の方に振り返る。見た目で判断してはいけないのだろうが、その巨躯と声のせいで威圧感が半端ない。
「は、はい……今度転入してくることになった宇津井亮司と……そっちが纏木平子です」
男に向かい咄嗟に考えた適当な名前をつける。
「ほら平子挨拶しとけよ」
怪しまれないようにと一応真琴に自己紹介をさせる。
「アタ……私はま、纏木ひ、ひ、平子ってい言います……今後ともよろしくお願いします……」
我ながらいろんな意味で凄いネーミングセンスだなと思いつつも笑いを堪える。
とっさのことだとはいえ、一緒に行動している人間の名前を間違えるなんてことは万に一つもないだろう。
怒り?をこらえて必死に自己紹介する真琴の赤面が実に可愛らしかったことは言うまでもない。




