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 追うことも考えた。しかしそれはフールによって止められる。

 力の差が明らかだからだろう。そのくらい自分でもわかっているのだが、無理に追おうとしてもフールに力の供給を差し止められてしまいかねない。彼が眠っていても能力が使えるとはいえ、動力源は《愚者》にあるため全ては彼の意思に従うしかない。フールは無理無茶をしでかそうとしている自分のストッパーなのだ。

 湧き上がる気持ちをどうにか抑え足場から真琴がいる位置に向かい跳躍した。彼女の周りに漂う緑の結晶光、霧散していくところを見ると、能力を解除したかのように見えたが、彼女の左目にはまだ緑縁のモノクルが浮遊している。

 彼女が帰したのか懋と新田の姿はそこにはなく、既に避難したようだ。

 


 片眼鏡越しに天蓋に空いた大穴を見つめる真琴。彼女の表情から徐々に不安が消えていくのを見て、安心そして苦さを覚える。

 何もできなかったのだ。尾裂狐のプレッシャーも然り、それ以外の七罪結晶の姓なのかもしれないが、思い切った行動に出ることができなかった自分を責めていた。


 「うん、消えたわね………」


 真琴の表情も安心に変わっていった。

 片眼鏡はエメラルドグリーンの結晶光を散らし霧散していく。そのままへたれ込むように真琴が崩れ落ちる。


 「どうしたんだ真琴!?」

 

 跳躍した先で突然倒れた彼女をとっさに受け止める。正面から受け止めてしまったため抱き合っているような構図になっているわけだが、そんなことを気にいしている場合ではない。


 「ごめん……ちょっと疲れただけだから……」

 「救急車呼ぼうか?」

 「いや、大丈夫よ……だからもう少しだけこのまま支えてて……」

 「あ、あぁ……」


 3分ほどであるが大穴の空いた闘技場で真琴と二人無言で過ごした。

 現場には能力孤児の集団と数人の教師がやってきて、椋は大まかな説明だけを行いこれ以上真琴を疲れさせない為にもそのまま一度第一寮に帰寮することになった。


 「もうそろそろいい……降ろしてくれる?」 

 「だめだ。病人はゆっくりしろ」

 「病人扱いすんな……」


 真琴の力ない声。彼女の最大で最悪の弱点。能力の使用が直接疲労に繋がるのはよくある話だが、彼女はその心身にかかる負担が他とは桁違いらしい。そんなわけで可愛らしい抵抗すらできない真琴と共にゆっくりと帰路につく。


 「本当に大丈夫か?」

 「うん……寝れば回復するわよこんなの……だから降ろして」


 言葉の割にしんどそうなその声、そんな命令に素直に従うわけがない。


 「だめだ。病人はゆっくりしろ」

 「だから病人扱いすんなバカ……」


 彼女の言うことに聞く耳を貸さず、夕焼けに染まる道を進むのだった。

 

 

 

 

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