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とりあえず、疑問点をいくつか取り出してみる。
1、小林達に事件の記憶がない。
これがそもそもおかしい。あれほどのことをしておいて、とぼけているのだとしたら本当に頭がおかしいとしか思えない。現在、公平な立場に立つ能力者が行う、過去視は裁判の貴重かつ、有力な証拠の一つである。
本人の意思に反して、実際の映像を確認できるため、言い逃れができない。よって小林達の証言を肯定したことになる。
2、俺があいつらを返り討ちにしたという事実がない。
これもおかしい。小林の眼には俺がたっぷりと血をかけたはずだ。残っていないわけがない。何かの情報操作か…?
しかし必要性が感じられない。正当防衛で済むわけがない。俺自身それなりに罰を受けるつもりで戦闘に挑んだ。しかし俺は完璧に被害者側になっている。
3、沙希が被害者に含まれていない。
これは沙希が否定したという可能性がなくはないが沙希の性格上それはないだろうとも思う。、あの現場には沙希の髪の毛が大量に落ちているはずだ。事件との関係を否定できるとは思わない。あの時駆け付けた救急隊員も、一目見れば沙希も被害者の1人と判断できただろう。
結論として、何かとおかしいのは確かである。必要性のない情報操作のせいでこちらからしたら疑問点しか浮かんでこない。
小林達のあの半狂乱めいた眼も何か関係あったのだろうかとも思えてくる。俺自身が見た瞬間に『いつものあいつじゃない』と思えるほどの変化があった。
考えれば考えるほどわからなくなってくる。
一度沙希に連絡し、この5日の間に起きた出来事を聞くことにした。
5日も寝たきりになっていたというのに、(起きてすぐはそうでもなかったが)一切の不調を感じない。むしろ好調なほどだ。
動きたくてたまらないが、さすがに点滴を引っこ抜く気にはなれないため、ベットの隣に置いてあるキャスター付きの点滴棒を手に取り、病院内を徘徊することにした。
ここで一つくだらない悪戯を思いついてしまう。
ゆっくりと歩き、ナースセンターに向かう。純白のキャップをかぶった若いナースさんに、
「すいません。迷子の呼び出ししてほしいんですけど…」
新人っぽさそうなナースが不思議そうな顔をしながらこちらを見てくる。
「はぁ…。じゃあその子の特徴とお名前、年齢を教えてくれますか?」
「えっと、名前は柊真琴、特徴は…とっても長い栗色の髪ですかね・・・年齢はわからないです」
前会った時からもう約1週間もたつわけだから、退院した可能性があるが、モノは試しである。
「大体でいいですから小さいお子さんですか?」
「はい。まぁ子供です。小さいお子さんといってくれれば大丈夫です」
ナースの表情は、《不思議そう》から《どうでもいい》に代わっていた。何とか怪しまれずにはすんだようだ。
「すいません。最後にあなたのお名前教えてもらっていいですか?」
「ああ、ごめんなさい。椋です」
ナースさんがきれいな営業用スマイルを作りながら、承りましたとだけ言い、ナースセンターの奥に消えていく。
1分ほどしたら、院内放送が流れる。そして椋は後悔する。こんなくだらないいたずらするんじゃなかったと…。
『迷子のお知らせです。柊真琴ちゃんという小さいお子さんが、迷子になっております。1階フロント前にて椋というお兄さんが待っておられますので・・・・・・・・・・・・・・・・』




