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12

 形勢逆転とまではいかないが、足をやられ行動に制限を受けた磯山は今も足を抱えながら蹲り悶えている。仲俣があと一発でも先ほどのロケットパンチを打ち込めれば気絶ないしダメージ上限に到達するだろう。しかも痛覚のせいでうまく思考が回っていないのか磯山は能力の展開を未だにしていない。

 左手で右脇腹を抑えながら蒼龍の一年坊に向かい着実に近づいていく仲俣。1mほどまで距離を縮めた位の頃だろうか、隣でともに観戦していた真琴が突然視線を天井に移す。

 

 「おい真琴、観察は続けなくていいのか?まだ試合終わってないぞ?」

 「…………………る………て……く」


 真琴の体が突然震えだすとともにかすれるように小さな声で真琴がつぶやいた

 

 「マコっちゃんどうかしたのか?」

 

 懋も心配そうに駆け寄ってくるが、彼女の目線は決して天井から離れない。

 そこに恐怖で流れるような冷や汗がだらだらと流れているのがわかる。椋も天井を見上げるがそれといった変化はない。あるのはただの天井だけだ。

 

 「何か来る……」


 はっきりと聞くことができた真琴の声。

 しかしそれを確認した頃にはもう遅かった。

 ドームの屋根の開閉は行われていないはずだが突然日差しが差し込んでくる。

 何かが輪っかを描くように広がっていき完全な円を描いているのだ。

 

 「早く逃げて!!」


 真琴の叫び。それとともにくり抜かれた天井が落下はせずそのくり抜いていった何かによって完全に消滅させられた。

 天井に空く直径10mはあろう正円。そこの中心、沈む前の差し込む太陽を背に何かが闘技場内に降りてくる。


 誰もが悲鳴など上げることなく現状の理解に必死になっている。今戦っている選手までもがその光景に釘付けだ。

 天井まで広げられた戦闘用フィールドに触れる。首元で光る鈍色の結晶光。それがそのまま何かを形成する。

 そう、各寮対抗試合の玄武戦。黒崎泥雲が使用した狐。黒く美しいフォルムの九尾、《尾裂狐》だ。尾裂狐はそのまま球状に変化し目で見て分からないほどの高速スピンを開始、そのままフィールドに突進していく。

 

 こうも簡単に破壊できるものなのだろうか?いやこの威力こそがもっとも単純に七罪結晶の異常性を表しているのかもしれない。

 単なる突進だけで戦闘用フィールドは粉々に砕け散り戦闘が強制終了。フィールドは選手の治癒を初めて行く。

 

 ようやく現状を理解しだした生徒のヤジが飛び始める。試合への強制乱入、考えられないほどの禁手だ。

 ゆっくりゆっくりと着地していく乱入者。白地のローブには木の蔦のような模様が張り巡らされている。そのローブの下、素顔は何かに覆われて確認することができない。


 そしてこの中で最も現状のやばさを理解している人間がここに二人もいるのだ。手遅れになる前に椋は全力で叫んだ。


 「今すぐ全員逃げろ!!」

 





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