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「ところで懋、契は?一緒じゃなかったのか?」
そんなどうでもいい事をだずねる。今朝の様子だと確実に二人は一緒に弁当屋に向かったと思っていたのだが。先程からその姿を見かけない。
「契っち?おりゃ知らねえぞ?」
「朝一緒に出て言ってたじゃないか……」
「何言ってんだよ椋、契っちはいいとこのボンボンだぜ?ワザワザここの激安弁当なんて買う意味ないっての」
「それもそうか……」
となぜだか妙に納得してしまう。永棟契、アーティファクトアーツ社の次期後継者になるであろう永棟久史氏の孫。今回の七罪結晶の一件に関して彼はかなりの重要人物らしく、彼にだけは自分が七罪結晶の回収をしているということをバラしてはならないという、親友ながらに複雑な関係下にあるのだ。
まぁこれも彼の冤罪を晴らすためだ。割り切ってしまえばどうってことない。
「契っちになんか用でもあったのか?」
「いや、特になにもないけど……」
懋と一緒に行動していないということは契は一体どこで何をしているのだろうか?
深く考え込むこともない。そんな個人的なこと詮索するだけ無駄だ。
ぱっと思考を切り替える。
「まぁ二人共、とりあえずそろそろ校舎棟行かないと遅刻するよ?」
そんな新田の忠告が右のほうから聞こえてきたため一度OLを起動させ、内蔵された時計を確認する。
残り15分といったところか。地下に張り巡らされた地下鉄のようなものを使えばどこからでもだいたい10分あればいけるようになっているためさほど焦りはしない。
「まだ少し余裕あるけどもう行ったほうがいいかな?」
椋がそんな質問を二人に投げかける。
新田はどっちでもいいと軽く受け流すが、懋の方はなんだか怪しむ、というより不満そうな顔を浮かべながらこっちを見ている。
「……どうしたんだ、懋?」
何か一連の行動に不可思議な点はあっただろうか?突然Ⅸと入れ替わってしまったためそこのところがわからない訳だが、新田の方を見やると、彼は首をかしげている。おそらく特に問題はなかったという意味なのだろうがこれは実に不安である。
「んじゃ行くか!!」
そんな懋はその訝しげな表情をパッといつものバカっぽい感じに変えそう言った。
突然指揮の主導権が懋に写り、椋と新田の一歩前で片手に弁当とカバンをぶら下げた茶髪が二人を先導するように歩き始めたのだった。




