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「椋!!アンタ本当にバカ?」
真琴の顔は誰が見てもひと目でわかるほどに怒りに染まっている。
理由はひとつだろう。
「一週間ぶりの再会でいきなり馬鹿とは失礼な……」
「ふざけないで!!アレもう見たんでしょ?」
真琴は食卓まで来ると問いかけるように聞いてきた。
彼女の表すアレとは学内新聞のことだろう。
椋の予想はこうだ。
彼女は新田と同じく、七罪結晶回収のために蒼龍第一女子寮を襲撃、破壊したと思い込んでいるに違いない。新聞を見た人間、なおかつ椋の現状を知っている人間ならばそう思われても仕方がない。
「言っとくけど俺じゃないからな……それ」
「じゃあ誰がやったて言うのよ…」
流石に2回連続で似たようなことを聞かれると面倒くさいというのが正直な感想。
そんな椋のあまりにも冷静な態度に真琴もつられてか、顔から怒りの表情は消え去り、冷静を取り戻しつつあった。
「強いて言うならローブの人間とでも言うか………」
「ローブ…?まさか能力孤児?」
「んなわけねー」
とまぁ彼女も本心でそう思っているわけじゃなさそうなので今回は華麗に流す。
「そういえばローブの人間ってのは麒麟寮の人間っぽいんだよ」
「本当に?」
あんまり反応が大きくないところを見るに彼女もそれなりに予想していたように見える。
「《強欲》が再生して麒麟の誰かが拾った可能性が高いって話しただろ?」
「言ってたわね…けどあたしの眼で見て、少なくとも第一寮にはそんな結晶なかったわよ?」
「それが問題なんだよなぁ……誰なんだ…わっかんねぇ……」
冷めないうちに一気に味噌汁をすすり、中の実までしっかりと全部食べる。
真琴が少し訝しげな表情を浮かべた。
「ところでなんでまた突然そのローブ人間の話題が出てきたの?」
「いやぁ…その…昨晩そのローブに先を越されまして…」
「ということは………結局アンタ何も回収でいてないの!?」
急に真琴が黙り込んだかと思えば再びばっと顔を上げ、響くような低い声を出す。
「じゃあアンタはこの一ヶ月何しに蒼龍に言ってたのかしらぁ!!」
殺気に満ち溢れる真琴がゴキッと拳で音を鳴らしながら、再び怒りの表情に戻っていく。
一歩また一歩と彼女がこちらに歩み寄ってくる。流石にここは反論のしようがないと言っておこうか。
「ちがっ…落ち着け真琴!!ちゃうんやぁぁぁ!!」
鉄拳が一発だけでは無かったことなど言うまでもない。
会話に割り込もうとぜず、ただただ傍観していた新田はやはり終始苦笑いを浮かべていたのだった。




