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 この寮での目的の第一は《強欲》を回収することにあった。しかしそれは今のこの蒼龍ではかなわぬことだ。椋…つまり学園側とは別に七罪結晶を集めて回る存在。今日それを改めて認識することができたわけだが、それをみすみす見逃すわけにはいかないし、このままでは他の寮で蒼龍第一寮のような悲惨な出来事が起こるかもしれない。ここでの生活は自分の人生での大切な1ピースとなった。その時が来ると心苦しい程にここを離れたくないという気持ちが湧き上がってくるわけだが、今は次の七罪結晶を回収しにいかなければならないのだ。


 「おいっ…貞男……お前もうこの寮から出ていくのか…?」


 うつむいた馳葺が疑問符をつけながらつぶやくように言う。


 「そうなるな…。俺はそもそもここにいちゃいけない存在、それにもうこれ以上…」


 これ以上猛犠牲者を出したくない。《強欲》の意思に駆られすべての七罪結晶を自らの手中に収めようとするソレが学園を壊す前に…………。


 「これ以上?」

 

 そんな長瀬の問いに回答が詰まってしまうわけだが、そその質問を解決する前に馳葺がバッと顔を上げる。


 「俺のせいか…?俺があんな酷いこと言ったせいで貞男はここにいられなくなるのか?」


  いつもきりっとしていた眉が垂れ下がり今にも泣きだしてしまいそうな表情を浮かべている。


 「いや…そんなこ…」

 「そうなんだろ?そんなつもりで言ったんじゃなかったんだ…裕輔の言葉で気づいたんだ…各寮対抗試合の蒼龍に対する卑怯な戦い方をした辻井椋を俺は嫌ってる…でもお前は伍莉貞なんだよな…お前は貞男なんだよな…俺の同寮で親友なんだよな…」


 後悔その言葉が最適とさえいえるほど馳葺秀人の表情はソレに染まっていた。自分が発してしまった暴言にも近いその言葉のせいで大切な親友が寮を追い出されることになってしまった。そんなことならそんな発言しなければよかった。そんな風に自分を責めているように椋には見えた。

 先程顔をゆがめていたのは怒りではなく後悔だったのだ。

 椋はついに目尻に涙を浮かべた親友の両肩をつかみしっかりと向き合って言う。


 「秀人、俺がこの寮を出ていくのはオマエが原因じゃない。さっきの言葉は俺が受けて当然の物だった。だからさ、自分を責めるなよ…」

 

 優しく微笑みながら親友に言ったその発言はその親友の混じりの涙をこぼすには十分すぎるものだった。 

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