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 「話がある…」


 第七寮の門をくぐり部屋までたどり着く前に言われた言葉はそれだった。

 声をかけてきたのは馳葺秀人である。その隣には長瀬雄介も腕を組みどっしりと構えている。

 二人の表情は疑念よりも少々の怒りの方が勝っているように見える。

 逃走は不可能だと考えた椋は連れられるように二人の部屋へと入っていった。

 

 こうなることも予想していた。


 「なぁ貞男……いや、違う。お前は誰なんだ?」


 飛んでくる質問は予想通りだ。しかし想定通りに動けるほどの強さは生憎持ち合わせていなかった。 


 「何言ってんだよ……俺は伍莉貞、貞男ってのも長瀬が俺に着けてくれたあだ名だろ?」


 誤魔化すように言う。OLの改造された改竄不能とされているパーソナルデータを二人に見せつけ、証拠として突きつける。

 しかしそんなものが通じるほど二人、いや、馳葺は頭が悪くなかった。


 「言い方が悪かったな、辻井椋。なんでお前が蒼龍寮にいる!!」


 怒鳴りつけるように馳葺が叫ぶ。隣の部屋まで聞こえてしまうんではないだろうかと思えるほどの大声で。


 「パーソナルデータは改造できないんだぜ?なんで俺を各寮対抗試合の麒麟の代表と一緒にするんだよ!!」


 大声で叫び返す。このまま押されてしまったら流れに乗せられ何もかもに負けてしまいそうだからだ。


 「じゃあなんでその伍莉貞が麒麟の代表と同じ能力を使ってんだよ!!」


 感情荒ぶる馳葺は思い切り右手で机を叩き付け椋を威嚇、いや追い込もうとしてくる。


 「それは!!………それは……」


 押し負ける。反論の余地が一切と言って良い程見当たらない。


 「そんな0と1とでできたデータなんかよりも俺は自分の眼で見た情報を信じるんだよ」


 最後の一押しか、馳葺がそう呟く。

 長瀬は何も言わずにただ腕を組み胡坐をかいて座っているだけ。二人の論争に一切口を挟もうとはしない。

 

 「俺たちをずっと騙してきたのか……?」

 

 続けざまに馳葺から発せられる言葉は確実に椋の胸を貫いていく。

 「違う!」そう声に出して叫びたい。

 騙していた訳ではないと叫びたい。


 「お前は親友だと思っていたんだけどな…」


 「それは俺も変わらない!!」 そう言ってこの場で誤解を解きたい。

 しかしそれは結果としてこの二人を巻き込むことになるかもしれない。

 徐々に徐々に増えてきた大切な友達、いや親友なのだ。こんな危険な事実を教えるわけにはいかない。

 そう心に誓い、反発心をどうにか抑え込む。


 堪え、いつまでも反論をしようとしない椋の様子を見てか、腕を組み傍観していた長瀬がついに口を開いた。

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