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 ゆっくりと瞼を持ち上げる。

 視界にはつい最近どこかで見たことがあるような、蛍光灯が並んでいる。


 (また…病…院?)


 かすむ視界の中、首を右に傾け、周囲を確認する。

 この前の時はなかった、ごつごつとした機会が複数ならんでいる。

 そして椋の鼻と口を覆うように、酸素マスクが装着してある。この前ここに来た時とは全然違う。

 前はただの自殺志願者だったが、今は重症患者扱いみたいだ。

 

 しかし、前と変わらないことが一つだけあった。

 今度は首を左に傾ける。

 沙希の手がが椋の左手をずっとやさしく、包み込んでいる。

 かすむ視界のだんだんクリアになっていく。

 

 その過程で椋は気が付く。彼女のシルエットが、これまでと違うことを。

 いつもの彼女なら、そこにあるはずの長髪がない。

 彼女に焦点が合う。あれほどまでに長かった髪は今はセミロングといったところか。

 肩にかかるかかからないか位の長さにカットされている。

 今は眠りについているようだ。

 

 椋の目から涙があふれる。

 小林が沙希の髪を切った時から覚悟はしていたが、実際に見ると相当きついところがある。

 自然と左手に力が入ってしまい、それに反応するように沙希が起きてしまった。

 

 

 酸素マスクのせいで声が少しこもってしまう。


 「ごめんな…また泣かせちゃったよ…」


 沙希は目の前で涙を流す椋を見て、自分自身も涙を流していることに気が付かなかった。


 「えっ?あれ?…なんで涙が出るんだろ。椋が起きたときは笑顔でって決めてたのになぁ……」


 沙希は右手を使い頬を流れる涙を必死にふき取る。が、決壊してしまったダムのように涙が止まらない。


 「ごめん…沙希…ごめん……」


 椋は右手を使い酸素マスクを外す。今は邪魔でしかない。

 少し体制をおこし、沙希の髪を右手で撫でる。

 その瞬間から、椋の涙も止まらなくなってしまった。


 「気にしなくていいのよ…また伸びるんだからさ…」


 もう沙希自身は吹っ切れているようだ。 

 涙が止まらない中、沙希が右わきの下と、左肩の上に手を回し、そのまま抱き着いてくる。

 

 幸いこの病室には誰もいないが、外に漏れてもおかしくないような音量で二人はしばらく泣き続けた。


 ただただ、泣いた。

 

 

 

  

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