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OLの着信によって叩き起こされるように目覚める。
どうも装着したまま眠ってしまったらしい。眠気を堪え、なんとか意識を保ちながらポップアップされたウィンドウを確認する。
表示されていた名前は大久保小崋。
その文字の羅列を観てようやくしっかりと意識が覚醒する。
そういえば彼女にメールを送ったはいいが返信を待たずに眠ってしまった。
部屋の時計を確認し、現時刻が午後の九時だということを知る。
とく見ればメールではなくボイスコールだ。
返事を期待する一面、冷静に電話に出る。
『…………はぁ…………伍莉君!!電話速よぉでてぇな!!』
息が荒い。走っているのだろうか?しかし様子が変だ。イロモノ寮監のいるあの寮を脱出しているのか?寮内で走っているとは考えにくい。彼女の一言でとっさにここまで思考を貼り回らせ、一大事だということを認識する。
「どうしたんですか!?」
『追われ…とるんやッ!!…………はぁ………』
「誰にですか!?」
『………はぁ…………それが分かっとったら…苦労せぇへん!!』
息苦しそうに応答する彼女、しかし何に何のために追われているのかがわからない。
「今すぐ向かいます!!先輩、どこにいるんですか?」
『今日…クレープ奢ってもろた広場のとこに…頑張って逃げる!!』
「分かりました!!」
急いでニット帽とメガネを装着し、部屋を飛び出す。
部屋のバタバタした音の姓だろうか?長瀬と馳葺がとなりの部屋から飛び出してくる。
「どうしたんだ貞男?」
長瀬の声が聞こえる。走って飛び出た椋は言い方が悪いがこの二人に構っていられない。
「緊急事態だ!ごめん…二人じゃ遅すぎる!!」
「何が…」
尋ねる馳葺の言葉を遮り叫ぶ。
「『光輪の加護』!!」
金色の光が廊下全体を包み込むようにまたたき、椋の全身を包み込む。それが四肢に集約し、能力が使用可能な状態になるとほぼ同時に右足で踏み込み、突き当りの窓から見えるビルのような少し高い建物に向かい一気に跳躍する。
残された長瀬雄輔、馳葺秀斗のふたりはただ呆然としていた。
「今の貞男の能力って……」
馳葺がつぶやくように言う。長瀬は静かに頷く。
「ああ…初めて見たけど間違いねぇよ……」
二人は静かに顔を合わせ、現状の把握を図る。
しかしどう考えても導かれる答えは一つにしか繋がらない。
「貞男……何のために……」
「何者なんだ?」
長瀬に続き馳葺、二人は受け入れることの難しい現実に直面したのだった。




