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 「本当にありがとうございました!!」


 無銭飲食うんぬんの話を大久保に言い、あの時の恩をできる限り心に留めて置けるよう、再び深々と頭を下げる。

 

 「いや、ほんまにかまへんのや!伍莉君のおかげでいい感じに満腹やからな!」


 そう言って彼女はお腹を2、3度ポンポンと叩く。

 女性には失礼かもしれないがこのくらい食ったら腹の少しも出るだろうと思っていたが、小柄な大久保の外見にさほどの変化はなく、身軽に歩行を続けている。

 大久保とほとんど変わらぬ量を50分以上かけて食べた椋でさえお腹が重く動きにくいというか動きたくないと思っているのだが、彼女にそんな面は一切感じられない。


 「先輩はいつもあんなに食べるんですか?」

 「ん、そうでもないで?なんでやろか……ここ一ヶ月お腹が減ってしゃあないんやわ」

 「一ヶ月!?一ヶ月もあんな大食いしてたんですか!?」

 「まあ毎日とは言わんけどな?」


 それにしてはかなりのプロポーションだと思うのだが……。いやまあ好きなものを好きなだけ食べたほうが実は太らないというのを昔聞いたような聞かなかったような……。そんなものなのか?

 としょうもないことを疑問に持ちつつ彼女と一緒に歩みをすすめる。

 

 「ところで伍莉君」

 「なんでしょう先輩?」

 

 少しにやけ顔になった彼女がピンッと腕を伸ばし、路上にある屋台を指差し言う。

 

 「あそこのクレープが絶品やっていう噂を聞いたんやけど……」

 「ま……まだ食べるんですか………」

 「確か伍莉君の所持金は300円やったやんな?」

 「正確には311円ですけど………」


 沈黙が訪れる。大久保はただただ甘え盛りの小動物のような目でこちらを覗いてくる。

 彼女の言いたいことなど百も承知なのだ。わかっている。しかし!!

 抗えないのも現実だ。

 「分かりました……買ってきます……」

 

 極貧財布の中身を搾り取る彼女は、先程までの天使のイメージとは違い、今はまさに小悪魔、いや魔女のようにも見えた。

 

 この所持金では残念ながら、彼女がほっしているチョコバナナクリームクレープは1つしか買えない。いや、300円でこれだけ大きいクレープが買えれば文句はないのだが…。

 大久保は今度はゆっくりと味わう様にチョコバナナクリームクレープを貪るのだった。

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