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 しかしこの賞金、自らが受け取りたいところではあるが、この状況なかなか手が出しにくい。

 周りの野次馬が消えたところでこっそり回収しようかと思ったが、大久保のあまりの男らしさに、観衆が消える様子はなく、そいつらは賞金の行き先が気になるようで、それをジッと見つめるものがほとんどだった。

 さて、どうしたものか。ここで素直に手を伸ばしたのならまさに野次を飛ばされてしまいそうだ。しかし何度も押し付けるように大久保に擦り付けるのもどうかと思う。

 椋が出した結論はこれだった。


 「ゴリっ………店長!!俺にこれは受け取れません!!」

 「どうしてだ小僧?それと今さりげなくゴリラって言おうとしてなかっ………」

 「そんなことありません!!」


 現にゴリラではなくゴリマッチョだ。


 「まあいい。お前が受け取りを拒否するならこっちで引き取るが本当にそれでいいのか?」

 「本当(は嫌だが)にそれでいいんです!!」


 できる限り低い姿勢でラブレターを渡す時のように頭を下げ現金8000円を店長に捧げる。が大久保が乱入してくる。


 「何言ってんねん伍莉君。キミが受け取ったてウチは全然かまへんのやで?」

 「そうだぞ小僧。一応ルール上お前は食い切ったことになっているんだからな、欲しければ持っていっていいんだぞ?」


 二人はどっちかって言うと損をする側だろうに、そんな発言に姿勢を変えないまま叫ぶ。


 「この賞金は俺個人が手に入れたものではありません。だからこれは……受け取れないんです!!」

 

 そう言って姿勢そのまま数歩前に出て店長の拳の中に紙幣を詰め込むように返却する。


 「小僧……」

 

 再び寡黙な店長の顔が笑顔で綻ぶ。椋のその行動も些か男前だったためか再び観衆が湧いたのだった。



○~○~○~○


 「じゃあ今日はご迷惑おかけしました。今度また来ます!」

 

 そう言って店のドアを開ける。

 

 「おっと、伍莉君ちょっと待ってぇな!」


 そういて大久保も一緒に退店しようとする。


 「嬢ちゃん、小僧。またいつでも来な」


 寡黙な店長のハニカミスマイルが実に爽やかで、実際無銭飲しようとしていた自分が思わず恥ずかしくなってしまう。


 「「ごちそうさまでした!!」」


 二人同時にそう叫んで、イタリアンレストラン、[Pieno stomaco]を後にしたのだった。

 

 

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