表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
244/414

13

 

 はてさて、日は同じくしてときは進み12時半。

 ニット帽の少年、椋は目の前のありえない量のミートスパゲッティに目を回していた。


(うっ……こんなの食えるわけねぇ……)


 椋が食しているのは特盛2㎏パスタ。完食できたら一万円という今のところ蒼龍にしか存在しない[Pieno stomaco]という巷では超人気イタリアンのお店だ。ちなみに伊語で満腹という意味らしい。

 そんないかにも日本風な大盛り文化がイタリアンと融合してそれはもうえげつない事になっていた。味には一切の文句のつけようがない、完璧だ。店長のオリジナルパスタとして、日本では一般的なスパゲッティーニではなく、少し太めのスパゲッティが採用されているこもあってかボリューミーでまだ三分の一と食していないのに腹の中はまさに満腹を迎えようとしていた。


 ちなみにこのチャレンジ一回2000円。さらにちなみに少年の財布の中身は311円。食べきらなければならない戦いがここにはあるのだ。

 少年は愚かなことにいけると思ったのだ。2キロなんて……そんな甘い気持ちでこの戦場に趣いたのだ。

 隣には店長と思しきスキンヘッドのゴリマッチョ。少しでもフォークを置こうものなら今にでもその鉄拳が後頭部目指して飛んできそうな雰囲気を漂わし、仕事そっちのけで椋の横につきっきりである。


貞男(サダオ)!諦めな!お前にそんな量くえるわけないだろ!」


 そう横槍を入れてくるのはこの店のアルバイト、惣流第七寮一年馳葺秀斗(ハセブキシュウト)。同じ寮生、長瀬雄輔の相部屋の生徒だ。厨房内でフライパンを駆使しながら余裕を持ってこちらに語りかけてくる。


「うるさい秀斗!俺は死んでも食い切ってやるからな!」

「はいはい……。ちなみに制限時間1時間だからな、残り時間20分切ってるぞ!」


 忠告を飛ばしてくれる親友を横目にミートスパゲッティと真剣に向き合う。まだ城のようにそびえ立つこのパスタを20分で完食しろだ?無理に決まってる……。

 そろそろ腹をくくらなければならないのだろうか……。胃の中では城の一部が食道い向かってせめぎ合い、今にも溢れだそうとしているというのにこんな絶対おかしいよ!

 などと言ってられない。いや、本当にまずい。


「フフッ……フハハっ……ハハハハハハハァハッハッハッ!!」


 絶望感から現れたその高笑いとともに何か色々こみ上げて来るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ