10
そして最も大きな問題点はコレにある。これもフールにはどうにもできないのだが、最も恐れていた事がこれまた19日に起こったのだ。
柊真琴にもバレた。
彼女の能力『可視化の片眼鏡』は人間の体内に流れるエネルギーを可視化することができる能力だ。
さて問題、中に《愚者》がいない偽物椋、Ⅸと真琴が接触したらどうなるか?
答えは簡単、即効でバレた。
19日《月》からの回収のために麒麟第一寮に帰寮していた本物である自分がそれはもう問い詰められたもんだ。
頭のいい彼女は何かと察していたらしく、すべて白状すると、少し悲しそうな顔をした後一応は許してくれた。沙希には黙ってくれる+新田とともにアフターフォローに回ってくれるとのことだったのでいいことだったのか悪いことだったのか微妙な出来事であった。
しかし意外なことに彼女は性格上付いて行くと言ってくるとばかし思っていたのだが、そんなことはなかった。いろいろ考えての決断だろう。今では感謝している。
そして最後に、これから起こるであろう問題がある。
そう、大宮の情報によれば蒼龍にはエレメントホルダーが二人いる。
ここで問題!!その二人のエレメントホルダーに自分の存在がバレたらどうなるだろうか!?
答えは実に難しい…。
いや、実際どうなるのか全然わからないのだ。
フール曰く、その二人は寮の最右端第三寮及びそのお隣第五寮に住んでいると予想され、少なくともこの一ヶ月接触はない。
いつか絶対、フールの力を回収せねばならないのだから接触するに越したことはないのだが、この七罪結晶回収ミッション中はどうも難しい。
各寮対抗試合、アレで恐らく《愚者》=椋=麒麟ということは各寮エレメントホルダーには知られている。
そんな《愚者》が侵入不能の他寮内にいるとしたらどうなるだろうか?ただでさえ仲の悪い双寮、事情を説明したところで納得してくれるのだろうか?どうにも微妙な所だ。こっちは向こうを狙っている存在であるのだからなおさらである。
これはもうどうしようもないと思ってしまっている上に、回避のしようがない。しかしそれを公然と明かしてしまえば潜入という行為が意味をなさなくなる。実に微妙なバランスで今の状況が保たれている。
自分が身を置いている状況、自分の心でせめぎ合う心情、少しのアクションで崩れてしまうのだ。矛盾した心のせいでそのワンアクションを恐れている自分。
しかしそんな殻から抜け出すための手がかりがようやく手に入ったのだ。




