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箱の左隅の方に置かれた真っ白な立方体の物体を取り出す。表面にはpatienceと彫り込まれている。
「これが?」
「そう、対応する七罪結晶をそれの半径3センチ以内に10分間置くことで封印が完了する……らしい」
「らしいとは?」
意味深な言い方に疑問を覚え聞き返す。
「今すべての七罪結晶は稼働しているだろう?つまりはまだ一度も封印はされていないのだ」
「ああ……なるほど」
そんな単純なことにも気がつかず思わず納得してしまう。
「ちなみにそれは『忍耐』、『強欲』に対応する七徳集箱だ」
「これが……」
なんだか箱というイメージが一切わかない真っ白な立方体をその箱に戻しさらに蓋を閉じる。
「これですべての七罪結晶が封印出来た時点で俺のミッションが終わったていう認識でいいんですよね?」
「ああ、その通りだ」
「回収の順はこっちで決めてもいいんですか?」
「まあそこは自由とするが、もしも被害者が出たなら絶対にそこを優先してもらう」
「理解りました……」
いや、全然理解ったわけではないのだが。
そもそも何で俺が選ばれたのだろうか?そこから理解らない。
《愚者》がいるからだろうか?それでも俺より強い能力者なんていくらでもいる。そんなことは当たり前だ。
ならなんでそっちに頼まないのだろうか?むしろ俺は入寮祭でおそらく学園全土に顔を知られている。自分で言うのもなんだが有名人だ。そんな俺に何故?
そんな思考が椋の頭の中でせめぎ合う。
契の疑いを晴らすという目的も無くはないが、方法は1つしかない。その持ち込んだ本人とやらをとっ捕まえるしかないのだ。それ以外の方法では不可能と現時点では思っている。
しかしその最後の方法も実現可能なのだろうか?
相手はただの傍観者としてこちらを観察しているかもしれないのだ。
決して公に姿を現さず、戦いもしない敵を捉える方法など椋には思い浮かばなかった。
「このミッションに俺以外の参加者は居るんでしょうか?」
「すべて少年、君の好きなようにやればいい」
「なんか、適当ですね……」
苦笑いしながらも、どこまでが可能なのかを考える。
「そっちはどの位までの支援をしてくれるんですか?」
「ふむ……そうだな……。少なくとも所持者の特定と回収、それだけは君に全て任せる」




