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『入りたまえ』
そんな聞いたことがある声が部屋の奥から聞こえてくる。
「失礼します」
そんなあくまで礼儀的かつテンプレートなセリフを放ち木製の扉を押し校長室に侵入する。
室内はこのフロアの廊下と変わらずかなり豪華な内装が施されており所々に匠の意匠が施されている、ように感じる。素人目には。
「辻井椋君だね?」
そう語りかけてくるのは、この部屋の一番奥にある大きな机、THE校長の椅子といった感じの黒い革製の椅子に座った花車学園、学園長村本重信だ。
「はい」
「突然の呼び出しに答えてくれて感謝するよ。《愚者》の少年よ」
そんな突然の発言に対しあまり驚きは示さない。向こうに知られているのは判っていたことだ。
それが今回の呼び出しに関係あるのだろうか?
「あまり驚かないんだな…もっと新鮮な反応を見せてくれると思っていたのだが」
「いや、それなりには驚いてるんですけど…」
そんなどうでもいい社交辞令的な会話を済ませる。
「そういうそちらも正の《魔術師》ってことはわかってますからイーブンですよ」
「そうりゃあそうか」
村本は笑い声とか表情とか入寮時の説明の時にはなかったなんというか砕けた一面を見せる。
いつまでも笑い続けているもんだから一度わざとらしく咳をしいい加減話を切り出す。
「ところで呼び出しの理由とは何なんでしょうか……?」
「ああ、すまんすまん。では本題に入らせてもらおう。」
表情の切り替えがあまりにも早く、先程までの砕けた表情が一気に覇気に満ちた真剣な表情になる。
「少年。君はあの試合中七罪結晶と口走ったな…。どこで知った?」
飛んできた質問は、七罪結晶関係。何かしら予想はついていたものの返答に困る。
冷静に山根に教えてもらったというのが得策なのか?
しかし素直に答えれば山根に迷惑をかける可能性が出てくるではないか。
「答えなくてはなりませんか?」
切り返す椋に対し、村本は一切といっていいほどその表情を変えず、宣言する。
「当然だ。その存在を知ること自体が異常なのだからな」
目を離せなくするような鋭い凶器のような眼光が椋を襲う。
「正直に言おう。少年よ、今最も疑われているのは君と友だ。永棟契君、彼がこの学園にアレを持ち込んだのではないか?とな…」




