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 「私の怪我をですか……?」


 困惑気味の乙姫の声音は少し震えている。


 「それがもしもできるのなら、乙姫はどうする?」


 YESが帰ってくると思っていた。もしも自分がその立場に立っているのならば確実にそう答えるだろう。両足を完全骨折し、しばらくは車椅子生活。さらに右腕は足より酷い骨折を負っているのだ日常生活を送るのも困難な状態である。しかし帰ってきた言葉は肯定ではなく否定であった。


 「もしそれができるとしても私はお断りしますわ。」

 「えっ?」


 思わず声を上げてしまう。そのくらいの驚きであった。

 

 「一体……なんで…?」

 「この体の傷はすべて自分自身の愚かさゆえに残った罪の傷です。そんな罪を誰かにそそいでもらうのは間違えてます。どんな方法を使うのかは知りません。でも私は時間をかけてでもこの傷と向き合っていきたいんです。だから、治癒の必要はありません」


 そんな彼女の目はあまりにも真剣であった。彼女の内面的なことを考えずにあんな思考を脳内に張り巡らせていたことをかなり恥ずかしく思い、またそれに気がつけなかったことを悔しくも思った。


 しばらくの沈黙が病室を覆う。

 微妙に気まずげな空気を打ち破ったのは乙姫であった。


 「そんなことより、入寮祭優勝おめでとうございます!」

 「え?……あ、うん。ありがとう」

 「格好良かったですよ?すごく……」

 

 少々頬を染めそんなことを言うもんだから再び少し気まずくなる。


 「でも、アレは俺一人の勝利じゃないよ……。乙姫がくれたあいつの能力の詳細がなかったらもっと苦戦しただろうしね。特に召喚系の情報はほんとに助かったよ……」

 「そういえば彼は本当に二重能力者だったんですね……しかも系統が違う」


 そういえば彼女は七罪結晶の存在を知らないんだった。

 話すべきか話さないべきか。迷った末の結論はフィフティフィフティだ。


 「あれは黒崎のナチュラルスキルじゃなかったよ」

 

 そんな椋の発言に乙姫は疑念の表情をうかべ、疑問符を掲げている。

 

 「どういうことですの?」

 「アレは七罪結晶。人工結晶唯一の召喚系シリーズらしい。契……アーティファクトアーツ社の跡取り息子が言ってたんだ」

 「そんな人工結晶が存在したなんて知りませんでしたわ……世間は広いということですわね」


 少し寂しそうな顔をした乙姫、その寂しさには同時に未知の存在への期待のようなものも込められていた。

 

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