3
食事を終えた二人はとりあえず少し話をすることにした。
深い話ではなく、どんなものが好きかとかどうしてここに来たのかとかそんな普通の話をしながら時間を待つ。
ちなみに新田は召喚系能力者らしい。詳細までは教えてくれなかったが彼もそれなりにこちらに心を開いてくれているのだなとなんとなく実感できたひと時であった。
現在の時刻が大体10時。正午に職員塔に向かうとしてもまだ時間がある。
そういえば大事な用事が一つ残っていた。別に急がないといけないわけではないし、できれば関わりたくはないのだが、いろいろ聞かねばならないことがある。
七罪結晶。今回は破壊に成功し粉微塵にしたわけだが、盗まれた経緯や犯人に目星はついているのかなど様々なことを確かめておきたいのだ。
現にそのひとつ。《強欲》の『尾裂狐』がこの学園の中にあったのだ。他の七罪結晶が学園内に存在してもおかしくはない。そしてもっているものが必ずしも善人ではない。力に魅了されてしまうかもしれない。この件に一応関わってしまっている身としては、はいそうですかで済ませられる問題ではないのだ。
そんなこの件の答えを知っている人間はこの学園に一人しかいないだろう。自室の向かいにある部屋に住む住人、永棟契だ。
今は少し宜しくない関係だが、彼に聞くのが一番手っ取り早い。懋とも和解?したようなのでおそらく大丈夫だろうと信じたいところだ。
当の本人、黒崎に聞くという方法もないことはないのだが素直に話すとは限らないし、またオウム返しのように「君に話す義理はない」なんて言われた時には修復フィールドが展開されていなくても『光輪の加護』で殴り飛ばしてしまいたくなるので、しばらくはいろいろと我慢するため合わないほうがいいだろうと思っている。
「新田くんちょっと向かいの部屋まで行ってくるね」
そう言って部屋をあとにする。新田の「まぁ頑張ってくれ」的な声が聞こえた気がするが、振り返ることなく扉を引いた。
そしてそのまま向かいの部屋の扉を叩く。
「どちら様でしょうか?」
と返ってくるその声はおそらく契のものだ。
「俺だけど、入っていいかな?ちょっと話したいことがあるんだけど……」
少し引け気味にドア越しの契にいう。
まあもちろん断られることはなくすぐドアの開錠音が聞こえ、契が顔を出す。
「そろそろ来ると思ってたよ……懋には少し席を外してもらってるから、どうぞ……」




