学生たちの楽園7~突然の始まり~ 1
2062年4月16日
昨日の興奮冷めぬまま迎えたこの日であったが、起床時部屋には可愛らしい寝顔の新田しかいない。
とりあえず懋は自室に戻ったようだった。
結局契は何故か打ち上げに参加しなかった。なぜかというよりはおそらく大宮と懋との話し合いのせいだろうと確信はしているわけだが。こういう時ぐらい楽しんだらいいと思う。懋の方も言いすぎたことはそれなりに反省していたし、大宮はそんなこと忘れたかのように振舞っていた。いつまでも引っ張っていたのは契だけだ。
とりあえずベッドから起き上がり顔を洗うために洗面所に向かう。
二人部屋というのに一室一室に風呂もトイレもキッチンもついているという素晴らしいさがこの学園のすごさだろう。生徒に負担をかけないように極力ストレスを減らすように設計されているようにしか見えない。
顔を洗い、鏡を見ながら左手で喉元をなぞる。いくらフィールドの効果で傷が治癒したからといっても、少し違和感が残っているのだ。それがむず痒くて仕方ない。
昨日OLに届いた学園からの連絡事項によると、あすの正午に職員塔まで来いとのことだったのでまだ授業が始まっていない休日ながらも早朝に起き準備を始めていたのだ。
「ふぁあ………おはよう辻井君…」
と新田がむにゃむにゃと口を動かし、寝言のような挨拶を飛ばしてくる。
「ごめん新田くん起こしちゃった?」
「んッ~気にしないでっ!僕も今日は用事あったし。」
欠伸をし、体を伸ばしながら新田が起き上がる。彼も洗面所の前まで来ると顔を洗い目を覚まさせる。
「用事って?」
「あぁ、ちょっと買い出しとバイト探しをね……」
そういえば大事なことを忘れていた気がする。
この学園、というより学生寮に並ぶ様々な店はほとんどが学生のアルバイトで成り立っているようなものらしく、随時バイト募集中なのだ。というより学費が免除されるとはいえ、生活費など諸々はすべて実費なのだ。
おそらく仕送りなんてものはもらえないであろう椋も適度にバイトを探さなくてはならない。
「そんなことより朝ごはんはどうする?僕作ろうか?」
と今後の学園生活を真剣に考えている椋にそんな提案が飛んでくる。
「新田くんはもしかして料理ができる男子なのか!?」
「ん?あぁ、自分のものは自分でどうにかする。これが僕の基本だから」
柔らかな微笑みを浮かべながら、ぽっちゃり系料理男子はキッチンに移動し料理をはじめた。




