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ルール上降参は口で叫ぶことでしか認められていない。それが一番手っ取り早く確実だからだ。洗脳系能力者が相手を操りOLの操縦で降参させたことがあったらしい。何度もそれを繰り返し不正ぎりぎりの手段で勝ち数を重ねたためOLからもその機構が消えたとかどうとか。しかしそんなことどうでもいいのだ。それができようができなかろうが関係ない、不思議なくらい全身に力が入らず両手以外は全くと言っていいほど動かすことができないのだ。
「鬼ごっこは終わりだよ辻井君!!」
そう言いながら黒崎が空中からストンっと降りてくる。地に足を付けこちらに向かい歩いてくる。
「いい加減飽きちゃったよ。君ならもっと楽しませてくれると思ってたんだけどね…」
そう言いながら黒崎が尾裂狐に指示を送るかのように左手で合図を送る。尾裂狐はそれに反応するように高速回転をはじめる。球状ではない、円盤状にだ。先ほど店内で見かけた丸鋸のような形状になったそれは不思議な音を立てながら何らかの指示を待っているかのように見える。
(何じゃないな…。俺を殺すための指示か…)
声に出そうとも吸気のかすれる様の音しかならない。
内心で少し心を決めてしまう。諦めたくはないのに自然にそんな心境に追い込まれてしまう。
「学園内全土に中継されてる中悪いけど、キミはいらないことを知りすぎた…死んでもらうよ!!」
そう言いながら構えた左手の人差し指と中指をキュっと曲げ攻撃命令らしきものを送る。
椋の頭部と身体を分けるために首元を狙って繰り出される技だ。当たったら確実に死ぬだろううそれはなんの躊躇もなく真っ直ぐに椋の元へと向かってきた。
『辻井君!!!』
と山根が叫んでいたような気がするがそんな声はほとんどといっていいほど椋の耳には届いていなかった。
椋の耳にはもうひとりの、椋自身の中に住むフールの声だけが何度も響いた。
『椋!御前の体しばしの間借り受けるぞ!!』




