表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
196/414

15


 買い物かごを片手に必死に走り回ってようやく頑丈な紐、大量のペットボトル、千枚通し、大きなリュックサック、そしてアレを買い物かごに詰め込み、急いで準備をする。


 『辻井君?貴方何をしてるの?』


 山根から飛んでくる疑問。山根はこちらの指揮官だが、同時に一観客者なのだ。少しは楽しませないといけないだろう。

 

 『楽しみにしていてください!』


 スタッフ専用の部屋に侵入し作業に集中する。3工程しかない単純な作業なためさくさくと作業は進み尾裂狐が到着するのよりも早く終わった。

 向こうも探すのに少し時間を食っているのだろうか?思ったよりも時間に余裕がもてた。

 それでもいつまでもここにとどまっているわけには行かない。リュックサックに完成品を詰め込み、さらに千枚通しで穴を開けた自分のベルトに紐で完成品をぶら下げる。

 

 「よしッ!!」

 

 気合をいれ準備も完了しリュックサックを背負った椋はホームセンターの出口に向かって走った。


○~○~○~○

 

 ずっ…。と不思議な音がした。ちょうどホームセンターをでたその自動ドア前での出来事であった。

 唐突過ぎて予測ができなかった。意識を不思議な音に向けることができるようになってからでは遅かった。直感的なものでとっさに右足でステップを踏み光輪を消費することにより跳躍する。たかが数十センチ後方に飛ぶだけでこれほど冷や汗を流したのははじめだった。


 待ち伏せされていたのだ。

 出口がここしかないということを確認した上でずっと待っていたのだろう。

 

 跳躍が終了すると椋の眼前を黒く大きな円盤状の物体が通り過ぎて椋の喉元にそれが(かす)った。


 「がぁっ!!」


 ほんの少し、本当にほんの少し(かす)めただけだったのだ。それだけで椋は後方に飛ばされホームセンターの反応しきれず中途半端に開いた扉に叩きつけられる。

 体中の力が抜けた。ズルズルと滑り落ち、地面にへたれこむ。

 視界に入ったのは円盤状の尾裂狐と黒崎だ。


 『辻井君!!降参(リザイン)しなさい!!早く!!』

 

 山根の大きな叫びが脳内で何度も繰り返されるが、手足が動かせない。そもそも声が出ないのだ(・・・・・・・)


 「ゼヒューー………」


 と虚しく空気を吸い込む音しかだせない。

 荒い呼吸音を立て、震える手で喉元を触る。出血はみとめられないがおそらく咽頭を傷つけてしまったのだろう。

 

 『すいません…先生…約束守れません…喉が……』

 

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ