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『それはおそらく歴史に残る世紀の大発明と言えるものだわ。原石は別として人工物から生物を、しかもあれほどの完成度で生成したのだから…。その後私が実際に見た生物を生成する人工結晶は3つ。コードネーム《暴食》『耳無豚』。コードネーム《怠惰》『鬼熊』そしてコードネーム《強欲》『尾裂狐』…。』
『その尾裂狐ってやつが今黒崎が使っている奴なのか…』
『私はこの尾裂狐が開発された時点で、ようやく研究の中核に立てるようになった。でもそれが間違いだった。私の人生が狂い始めたの……。4つ目のソレを作るときに私が目にしたのは地獄だったわ…。製造されていたのはコードネーム《色欲》『傾山羊』。材料は大量の人間。そして天然結晶を宿した小さい子供……。正の《塔》の能力者がそれを全てひとつにまとめて原石超深部と融合させてたの…。』
『それって………』
駅のホームで座り込みながら事の深刻さを真剣に考える。
『それを見た直後に私は研究所を逃げ出した…。後に調べてわかったことは使われていた人間は全て世界各地の犯罪者その中でも死刑囚。大罪《傲慢》《嫉妬》《憤怒》《怠惰》《強欲》《暴食》《色欲》を犯したものをそれぞれの罪に分けてそれぞれの結晶と融合させていたということ。そして天然結晶を宿した子供は一切無関係だったということ…。』
『それはッ!あまりに非人道というか……そんな…』
もう言葉が出てこなくなっていた。非人道さのせいではない。自分自身の人生とそれが当てはまってしまったからである。
10年前ちょうど椋は5歳だ。フールは言っていた。当時は能力が開花する前の小さな子供を誘拐して売り払うという事件が少なからず起きていたと。そして椋と沙希はその被害者なのだ…と。
もし、もしもあの場面沙希が能力を覚醒させずに捕まっていたのなら、今頃自分たちはその原石超深部との融合実験に使われたのではないだろうか?
考えただけでも寒気どころか吐き気まで湧き上がってくる。
『大丈夫?辻井君?』
『はい…続けてもらっていいですか?』
『ええ……わかったわ……。生物を召喚できる、つまり召喚系の人工結晶は全部で7つ。それぞれが七つの大罪をモチーフにして作られているの。故にそれらは『七罪結晶』と呼ばれ人類最狂で最凶の発明となった。私が都市伝説みたいな容量でそんな非人道的な実験が行われていて、召喚系の人工結晶が完成したっていう噂を流したからそれ等が公に発表されることはなかったわ…。』




