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黒崎が右手をさっと振る。それに合わせるかのようにスタジアムの端から高速回転したままこちらに向かって移動してくる。それは再び地面を跡形もなく抉り、そして椋自身の肉体をも抉りとろうとてくる。


 直感的かつ先程の一撃で理解した。これはヤバイなんてものじゃない。

 召喚系は召喚物自体が複数の能力を所持しているのが世間一般の常識だ。人工結晶、恐らくギルティマテリアルとやらから生まれたこの九尾の妖狐もその常識とやらに当てはまるだろう。

 たったひとつの技がこれ程常識はずれなのだ。想像しただけでもゾッとする。

 とりあえずこの高速で直線上に飛んでくる妖子を避けるため少し左にずれる。


 『だから速く逃げろっていってるでしょ!!』


 山根の声が脳内に響くが、今のこの単純な攻撃をそんなに警戒する意味がわからなかったのだ。山根の次の言葉を聞くまでは。


 『そいつ曲がるわよ!!』


 背筋が凍る。そう、その時点でもう高速移動する妖狐は椋の後ろで進路の変更を始めていたのだ。


 (……っ!!間に合わない!!)


 開放された天井を見上げ座標など気にせずに一気に跳躍する。冷や汗なんてものじゃない。時間がゆっくりと流れる。『光輪の加護』のスピードがあってしても一度自分自身で踏み込まなければならないのだ、この至近距離ではギリギリ避けられるか避けられないか。しかしそんな暇はない。考えもなく思い切り跳んだ。

 球状の妖狐はそのまま地面を抉りつつも黒崎のところに帰っていくのを確認できた。痛みも感じない。身体は無事なようだが、回避には失敗したようだ。左足の靴のつま先が異常ななくなり方をしている。

 『私の命令は聞けといたっでしょ!!』

 

 滞空中山根の声が脳内に響く。怒られるようなことをしたのは自分自身なのだが、今はそんな場合ではない。次の跳躍先を探す。この場所ならたいていの場所が見渡せる。とりあえずいったん逃げて体制を立て直さなければならない。今もスタジアムからこちらに向かって高速移動してくる黒い妖狐が見える。

 『すいません!!とりあえずちょっと待って下さい!はよ逃げな!!』

 『何で最後だけ関西弁なのよ……』

 『とりあえず逃げるなら校舎棟にしなさい。今日は休日だから人も少ない、それに障害物も少ない!』

 『わかりました!!』

 そういって近づいてくる妖狐を無視して上空から見るとバームクーヘン状に見えるこの学園の真ん中の層校舎棟の適当な場所に向かって跳躍した。

 

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