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「ギルティ…マテリアル?」
オウム返しのようだ、謎の新出単語の説明を山根に求める。
「…………んなさい……」
全身が強張ってガタガタと震える彼女の口から小さな言葉が漏れてくる。
先程までの二日酔いの気だるそうな表情は完全に消え、代わりに青ざめて生気をなくしたような表情をしている。
「先せ……」
無理やり言葉を遮られる。
「だから今すぐ棄権なさいと言ってるの!!」
椅子から立ち上がり叫ぶ彼女の目はあまりにも真剣で、否定を許さないような目であった。
しかし反論はする。特別な事情がありそうなのは彼女の顔を見れば一瞬で理解できたが、自分にも特別な事情が存在する。
「どうしてです!そもそもギルティマテリアルってなんなんですか?」
正面のテレビでは金田の勝利により第9試合が幕を閉じていた。
しかしそれがどうでもいいと、そんなことよりこっちに意識を向けていないと殺されてしまうと思えるほどキツい殺気にあふれた視線が注がれる。
「大人の言うことを聞きなさい!!言ったでしょ、私がルールなの!!どうしても行くって言うなら半殺しにしてでも止めるわよ」
「こっちにだって事情があるんです。止めるんなら殺す気で来てください!!」
無効に比べたらいささか可愛らしいものかもしれないが、必死の反抗を見せる。
「この学園の教師は暴走した能力者のガキを止めるための特権を持ってるの。半日気絶させるぐらい簡単よ!!」
なにが普段はあんなにだらしない山根をここまで真剣にしているのか。なにが女性にここまできつい殺気を出させるのか。そもそも彼女のこの異常な威圧感はなんなのか、正の《悪魔》のホルダー、出丘でさえここまでではなかったはずだ。プレス機で上から重圧をかけられているような、押し付けて無理に命令を下すような、そんな威圧感が真っ白な部屋全体を包んでいる。
「貴方の覚悟なんて所詮ガキの戯言だわ!!もし行ったら本気で死ぬかもしれないから止めてるの。一時的な感情にだけ揺られて命を落とすほど愚かなことはないわ。あなたの『光輪の加護』は回数制限付きのものでしょ!弾数切れた瞬間に殺されるのは目に見えてる!!」
「ギルティマテリアルか何か知らないけど、僕はそれでも行きます!約束したんです大勢の人と、絶対勝つって!!」




