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「それにしても蒼龍の須山くんだったかな?あの子まで棄権するとは思わなかったわね。結構プライド高そうなのに……」
「そうですか?僕も同じ立場に立ったなら確実に棄権しますよ」
苦笑いしながら放つそんな言葉に山根は不思議そうに首をかしげている。
「貴方棄権するの?そうしたいなら私は止めないけれど……」
「何言ってるんですか。そんなことするわけないじゃないですか。だってアイツは……」
自然と拳に力が入る。まるで悔しさと自分の不甲斐なさを外に漏らさないための牢獄のように固く固く結ばれている。
「まぁなにより、危なくなったらすぐさま危険なさい。決して坂本さんみたいになっちゃいけないわよ」
そんな言葉に全身の力が抜け、白いソファーに身体を沈める。
とりあえず落ち着こう、そんな気持ちで目を閉じ、冷静に考える。
「そういえばこの学園の教師って能力開発の研究員も兼ねてるんですよね?」
山根に問いかける。
「全員ってわけじゃないけどね。まぁ7・8割は研究員ってところかな…」
「ちなみに先生は?」
「私も研究目的も兼ねてここに来てるわ。専門は人工結晶、昔は開発にも携わってたのよ?まあ最近は寮監職押し付けられてろくに参加できなくなってるけどね」
なんだかそれでは本末転倒というか、ここに来た意味があんまりないような気がする。というか山根自身そんな感じの顔をしている。
人工結晶に詳しい……。なら知っているのではないだろうか。黒崎が使っているかもしれないそれを。
「ならそんな先生に聞きたいんですけど、人工結晶のアクトスキルで召喚系の物って存在しますか?」
山根の眉毛がぴくっと動く。
「何言ってるのよ。あれは現出もできなきゃ召喚もできないわ」
「いや、第4試合で乙姫が黒崎に攻撃されてるさなかに黒い生物のようなものを見たそうなんです」
眉間のあたりを押さえて、悩むように言葉をひねり出す。
「人工結晶で説明できなきゃ黒崎が別系統二重能力者ってことになるんで納得できないんですよね…ありえないですよね…さすがに……」
彼女から反応が見えないため、頭をあげ、彼女の顔を確認する。
信じられない、というより信じたくないといった表情を浮かべている。
言葉が出ないと言ったように口をパクパクさせながら、何かを絞り出そうとしていた。
そして、そんな彼女の口から出た言葉は椋の知らない謎の単語だった。
「七…罪…結晶……?」




