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10

 

 とりあえず控室に帰る。やはり部屋は嘔吐物の匂いが充満していて長く居られそうにない。部屋には長椅子に毛布を掛け仰向けになって山根が寝ている。

 椋の入室に気がついたのか、山根が寝返りをうち起き上がろうとする。

 「すいません…起こしちゃいましたか?」

 「ん……いいえ…いいのよ…気にしないで……」

 そう言って姿勢を起こし、少しスッキリしたような顔をしている。

 「大丈夫ですか、先生?」

 こちらに手のひらを向け、大丈夫と合図を送る。しかし少し頭痛が残っているようで頭を抑えている。

 「すっきりしないならもう少し寝てた方がいいんじゃないですか?」

 「いや…大丈夫よ、試合も見ないといけないしね……」

 「あまり無理しないでくださいね?」

 人が二日酔いをしているところは初めて見た。自分自身未成年で酒は飲まないし、身の回りに酒を飲む人間はいない。これ程きつそうにされては心配もしてしまうというものだ。

 人により個人差があるのだろうが、こんなところを見せつけられれば永遠に酒なんて飲みたくなくなってしまう。吐き気は収まっているようなのでもう心大丈夫なのだろう。


 疲れきった顔をした山根がトイレに向かうのを見送ると、真剣に今からの事を考える。

 乙姫との試合は危険ということで不戦勝、故に本日の試合は3戦。

 試合自体が取り消させるわけではないので、第6試合朱雀VS麒麟はそろそろ消費される。

 その次、第7試合蒼龍VS玄武が15分後に開始されるというアナウンスが先ほど入っていた。


 そもそも黒崎泥雲という男、実に不思議な人間だ。いや不気味すぎる、あまりにも不可解な点が多いのだ。

 まず特殊(ユニーク)系能力と召喚(サモン)系能力という系統の違う二種の能力を使うという点もそうだ。そこからありえないのだ。

 系統の違う二つ以上の能力を使うことができるのは《エレメント》を宿したもののみだ。《エレメント》であるフール自身がそう言っているのだから事実なのだろう。

 そしてもう一つ、奴自身が醸し出す気持ちの悪いオーラのようなものだ。一定以上の力量がある能力者には感じることのできる(とはいっても椋自身フールが宿っていることで感じることができるのだが)アレだ。

 まるでそれ自身が意志を持っているかのようにねちねちと絡みついてくるアレも正直無視せずにはいられない。アレ自身が黒崎の狂気を誘っているような、アレ自身が狂気を放っているようなそんな感覚にとらわれてしまう。

 

 

 


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