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 そこえと向かう足取りは重いものであった。もう招集はかかっているはずなので、急がないといけないのだがどうしても歩調は速くならない。そこには間違いなく黒崎がいるのだから当たり前と言えば当たり前だが。

 しかし決して歩行は止めない。進んでいるのは勝利という結果へという一本道だ。脱線するわけにはいかないし引きかえすわけにもいかない。決めたのだから。だからこそ一歩一歩細く険しい道を踏みしめ掴むのだ、勝利を。

 堅い決意をもとに再びスタジアム中央に向かう門を開け放った。


○~○~○~○


 きょうの会場は昨日よりもさらに盛り上がりを見せていた。ドームの中央に立ち、その回りは大人たちに囲まれている。まるで賭け事の駒にされているような気分だ。

 嫌な雰囲気のなかそれでも中央に向かい歩き続けた。蒼龍寮代表須山、白虎寮代表金田、そして玄武寮代表黒崎がすでに待つそこに。

 『ここでようやく麒麟寮代表辻井椋選手の入場です!!』

 そんな思いきった遅刻をした記憶はないのだが、他の選手が早く着すぎていただけなのだろうが、自分が以上に遅れたように感じてしまう。こういう風に言われてしまうと少々の罪悪感が浮かびあがってくる。

 『本日朱雀寮代表坂本乙姫選手は先日の試合の怪我により棄権と言う事なのでこの4寮の代表で争っていただきます。』

 会場のざわめきが視線になり黒崎一点に集中する。しかしそれは嫌悪のような視線ではない。期待をされているような、熱気に満ちた視線だ。

 やっぱりここの大人は少しおかしい。と、まあ考えたところでこの学園の教師達は研究員の集まり、そうなるのも自然の理だろう。良い事とはいえないが。

 今この場において注目される選手は今のところ全勝中の黒崎、そして自分自身だ。特に黒崎はパフォーマンスのようにあの朱雀戦をやってのけたので、こっちよりもさらに注目を集めているのだろう。

 『では、これにて出場選手の紹介を終わります。各寮代表選手はそれぞれの控室に移動して待機していてください。以上、解散!!』

 司会者の声により金田、須山はすぐに会場を去る。ささっと四方にある入場門の方へと消えていくが

黒崎だけがこちらに向かい歩いてくる。挑発しているのか、目的がつかめない。だんだんと近づいてくる黒崎から逃げることもなく、椋は迎え撃つようにドンッと構えて待つ。しかし怒りが押さえきれない。

 「何の用だ!!」

 怒鳴るように投げ掛ける。

 「ハハッそう邪険にしないでくれよ。僕はただ楽しみなだけだよ」

 見てる方からしたら爽やかな笑顔だ。

 しかし向けられている方からしたら気持ちの悪い。黒崎のオーラのようなものが絡み付いてくるようだ。

 「君とのバトルがね!!面白い試合楽しみにしてるよ」

 最高潮の笑顔が狂気に変わったところで、黒崎はそのまま去っていく。

 全身に走る悪寒が表にでないように必死にこらえる。

 黒崎がスタジアム中央から姿を消すまで、椋は黒崎の背中を睨み続けた。それが今できる唯一の抵抗だった。




 

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