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「それって…どういう……。」
彼女のそんな発言に、思わず立ち上がり動けない乙姫の元に詰め寄る。
「そんなにがっつかないでください…。」
「だけど…そんな…。」
それじぁアイツも、黒崎もエレメントホルダーということになってしまうのではないか?
『その可能性は低いな。』
不意にフールが話しかけてくる。
フールと話す方法は3種類存在する。
1つは狭間、彼が直接心に語りかけてくるものだ。自分の心情は常にフールに伝わっているため、念じることで返事ができる。フールのみに伝えたいことは基本的にこの方法で伝える。
2つ目は『移り気な旅人』。召喚系能力で、《愚者》の意識を具現化し小人形態として召喚するものだ。これは複数人との会話の時に使う、自分以外の人間に《愚者》の意思を伝えるための方法だ。
これは《エレメントホルダー》なら誰でも出来るらしい。
そして3つ目。心内空間と呼ばれる空間で話す方法だ。心内空間(フール曰く自分自身の心の中)には《愚者》の承認がなければ行けず、《愚者》自身も疲れるらしいのであまり活用されない。しかしこの空間は外界との時間の流れが違い、外界での1秒はこちらでの250秒に該当する。とはいえ心内空間は真っ暗、唯一見えるのは自分自身の体とフールだけ。これを使ってどうとかできるわけではないので、本当に大事なことを伝えるとき、自分の存在がバレないようにするときなどにしか使わない。
今がその自分の存在がバレなようにするときだ。
ここで軽々しく《エレメントホルダー》だのなんだの口走ってしまえばバレてしまう可能性が0ではない。
もしも彼女に《エレメント》の知識が存在すれば面倒くさいことになりかねない。
隠し続けるとは辛いものだが、今はそんなこと考えている場合ではない。
自分の視界が一気にブラックアウトしたかのように黒く染まる。
『どういうこと…?フール。』
あまり取り乱すこともなく、フールに問う。
『言ったとおりだ、自身の存在を隠すことができるのはヘカテとその他指で数えられるぐらいだからな。普通の《エレメント》は認知できるはずだ。しかし彼奴からそれが一切感じられん。むしろもっと気味の悪い……。』
何故かフールが途中で発言をやめてしまう。
『とりあえず《エレメントホルダー》じゃないって分かればいいか…。でもなんで乙姫は複数能力を所持してるだなんて言ったんだろう…?』
『それは我にもわからんが、ひとつだけ…もしかしたら…。』
『何?分かることなら教えて欲しいな…。』
そんな軽い気持ちの質問で彼から出た答えは予想外問言うよりも、常識はずれなものだった。




