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「じ…じゃあいい情報の方から聞こうかな…」
「わかりましたわ!」
少し嬉しそうに口元を緩めた後、再び固いまっすぐなは表情に戻る。
そんな彼女の口から出てきた言葉は再び掠の虚をつくのに十分なものだった
「黒崎の能力がわかりましたわ…。」
「本当か!?」
「おそらく…というよりは大まかにですけどね…。」
十分だ。大まかにでも知っていると全く知らないではアドバンテージが違いすぎる。
「黒崎の能力が移動能力拡張ということはわかってますよね?」
「うん。空中に浮けるんだからそういうことになるね。」
改めて聞かれるが、問題はその先だ。能力の癖や制限など分かればなおよしだ。
「彼の能力は自分の頭の位置と自分の体の任意の位置とを入れ替える能力ですわ。」
「………ん?」
いっている意味が椋の頭では処理しきれず、思わずクエスチョンマークを頭のてっぺんに浮かべてしまう。
フーっとため息をついた乙姫が細かい説明を初めてくれる。
「つまりですね……、自分の頭の位置をA、自分の体の任意の部位XをBとします。黒崎の能力はAの位置にBを持ってくるというものですわ。それを何度も繰り返せば空中にも浮かべる訳ですね。」
彼女の言った言葉を何度も頭のなかで反復させようやく理解に達する。
「つまりは小刻みに移動を繰り返して上昇している、だから浮遊中は点滅してるように見えるのか…。」
「そういうことですわ。滞空するためには少しとまってまた上昇少しとまってまた上昇と繰り返せば同じ高度にも入れるということですわ。」
「これって思っているより厄介な能力だな……。」
「そうですわね、あなたの能力とはあまり相性がいいとはいえませんね。白虎の代表も肉弾戦だけで挑んであの有様ですから武道の方もかなりの実力者かと……。」
貴重な情報を聞けたなと思いつつ、そういえばとも思い、
「じゃあ面倒くさい情報も教えてくれるかな?」
と切り込む。
「本当に聞くのですね……?」
「うん。聞かせてくれ。」
それはさらに椋を驚かせるものだった。
いやそれを超えて驚愕なものだった。
「彼、能力をいくつも持ってますわ…。」




