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 扉は少量の駆動音を立て自動的にスライドする。

 と同時に4月のまだ少し冷たい風が吹き抜ける。窓を開放しているのか?少し気になったがとりあえず病室に入る。

 「おはよう、乙姫。お見舞いに来たぞ!」

 自分の心とは正反対の明るめの声でスタスタと歩みを進めていく。

 「おはようございます、辻井さん。」

 彼女の声が聞こえる。通路を抜けようやくベッドの端っこの方が見えてくる。

 「ごめん、手ぶらだけど気にしないでくれる?」

 歩みは止めない。しかし声は出なくなる。

 「とんでもない。私は辻井さんが来てくれただけでとっても嬉しいですわ。」

 視界にだんだんと彼女の全身が映り込む。

 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥・っ!!」

 目の前に広がるのは柔らかい光、そしてあまりにも痛々しげな乙姫の姿だった。

 

 覚悟はしていた…。しかし彼女が大きな怪我を負ったところは右腕だけだとばかり思っていたのだが予想以上にひどい。

 右手と両足には大きなギプスが、顔にはいくつもの大きなガーゼと包帯が。まるで交通事故でも起こしたのではないだろうかと思うほどだ。

 やはり考えてしまう。

 もう少し早ければ…。

 もう少しだけ早く彼女を救い出せたならと…。

 うつむき病室の白い床ばかりを眺めてしまう。

 後悔の念に駆られるとはまさにこのことだろうか。

 「朝っぱらからアポイントメントなしで突然訪問してきたと思ったらなんです?その顔は…。」

 そんないつもどおり(といっても出会ったのは昨日だが)の様子を見て、向こうに気を使わせてしまっては悪いと思い、心の黒い靄を振り払う。

 「いや、なんでもないよ…。それより体は大丈夫?」

 「もちろんです!……と言いたいところですが本日の試合、出れそうにありませんね…。先ほど電話で学園側にその旨を伝えたところです。」

 少し寂しそうな顔をする彼女のベッドのとなりまで歩み寄り近く置いてあった白い丸椅子に腰掛ける。

 「まあ、思ってたより全然元気そうだし安心したよ。もっとヘコんでると思ってたから。」

 「そりゃあヘコみましたとも……本当に…本当に怖かったんですから…。」

 そんな冗談交じりの会話をする。お互いがある程度わきまえていればこんな会話でもジョークにできる。

 

 そんな乙姫が少し真剣な目になり、つぶやくように言う。

 「辻井さんにお得な情報が二つありますわ。役立つ悪い情報と面倒くさい悪い情報、どちらがいいですか?」

 ニコッと悪意のない無垢なスマイルでそんなことを言う。

 (どっちも悪いのかよ!)

 と心の中でツッコミを入れ、現実でもそれを行うか真剣に迷う椋なのだった。

 

 

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