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 「契っち…。本気で言ってるのか?」


 怒りというより哀れみが含まれるような声が響く。


 「違うな…本気でそう思ってるのか?だ」

 「何をだ‥‥‥‥‥

 「本気で!!本気で諦めるとか言ってるのかって聞いてるんだ」


 と契が聞き返す前に懋は立ち上がりそう叫んだ。

 暗がりでもわかる懋の少々怒りの混ざった表情にこの場にいる全員が動きを止める。


 「僕だって諦めたわけじゃない!!そうじゃないんだ……。でも……」


 と契の言葉が詰まる。

 懋はその場をさろうと部屋のドアに向かい歩く。


 「契っち…お前は間違ってる。『でも』じゃないんだよ…。そう思ってる時点でお前には永遠にエレメントなんて宿らない……、宿るわけがない」


 そう言って懋が部屋のドアノブを回し部屋の扉を開ける。


 「懋!」


 椋の呼び声が彼に届いたのか一度立ち止まり契に対し最後に告げていく。


 「椋や先輩がエレメントを宿したのは決して諦めなかったからじゃないのか?頑張って頑張って頑張って、折れそうになっても決して諦めず頑張り続けたから二人にはエレメントが宿ったんじゃないのか?頑張って、頑張って、でもそこで諦めてどうするんだよ…。今のお前はダメだ。根が腐ってる」


 そう言って堂々と去るようにドアを閉める。

 少々ちゃらそうなイメージの彼からは想像がつかないほどの発言、彼の口調の変化もあり相当ご立腹なのが伺えた。

 反論するものどころか声を発する者もいない。

 正論と言っていいのかはわからないが、少なくとも椋には懋の言葉が正しいと思えたからだ。

 大宮も、そして自分自身も確固たる強い意志の元エレメントが宿ったのだ。

 

 懋がさってから結構な時間が経ち流石に明日に備えて就寝しなければならないなと思い、大宮とともに部屋をさろうとする。


 「契、俺そろそろ帰るからな…」


 返事はない、彼にこの声が届いているのかもわからない。

 ただ、真っ暗な部屋には契の小さな小さな啜り泣くような声だけが永遠に響き続けた。

 

  

 

 第十部 今ここにいる理由 終

 

 

 

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