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 「エレメントホルダー。辻井君や私みたいな《愚者》とか《ヘカテ》を宿す人たちのことを指す言葉だよ。まぁ《愚者》が含まれるかは微妙なところだけどね。私が確認しただけでもこの学園に9人はいるよ。麒麟寮には私と君あともう1人、1年生の釉上野花(ユウガミノバナ)っていう正の《節制》の子もいる。朱雀の総代表もそう、あの寮は1人ね。蒼龍に2人。玄武には1人もいなくて白虎に2人いるかな…。」

 彼女の口から出る数字を足していきながら合計が8であることに気が付き、


 「えっと……それと校長ですよね?」


 と尋ねる。


 「そう。正の《魔術師》、最強のエレメントホルダー……。普段はとっても温厚な人だから、同じエレメントホルダーとして相談に乗ってくれるくらいなんだけどね…。1年前、この学園に襲撃事件があったの。大量に集められた能力者の子どもたちから1年かけて集めた膨大な研究資料を盗もうとした阿呆がいたの。大隊レベルの人数が一気に攻めてきたんだけど、全員を10分で撃退、しかも一人で。考えられないよね……」

 「そういえば《愚者》も言ってました。本気で戦っても1分持たないかもしれないって………ってあれ?」


 急に不自然な点に気がつく。今思えばとってもおかしい。


 「なんで先輩の《月》のこと教えてくれなかったんだ、フール?」


 スッと頭の中で『移り気な旅人』と唱え、《愚者》を呼び出す。

 周りの暗さをけし飛ばすようなまばゆい金色の光が椋と大宮の中間点あたりに集結し、小さな人型を形成していく。


 「我にもわからん。この娘が近づいて来ただけで察知できなかったという事はおそらくヘカテの方が隠しておったのだろう」


 と少しつまらなさそうな顔をしながらフールが言う。

 すると彼女の裏からピョコっと顔を出すフールと同じサイズの小人がそっとつぶやいた。


 「あらフール、久しぶりじゃない。あの戦い以来かしら。貴方は適合者を選りすぐる癖があるから次の憑代がさっさと見つけられないのよ」

 (あの戦い…?)


 とおそらく大宮の言うヘカテなる小さい女性が出したそんな単語がひかっかる。


 『我の力を奪われた戦いの事だ。前の憑代はそれのせいで死んだ…。そして我も体力が尽きて長い間適合者を探すのをやめ、長らくの暇に入っておったのだ』


 大宮とヘカテに聞こえないように心の中でフールからその情報をもらう。珍しい彼の少しさびしそうな感情が伝わってきた。

  

 

 

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