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椋、山根は二人テレビをじっと見ていた。会話もなくただただ第四試合、朱雀VS玄武の試合を眺めていた。いや、正確にはまだ始まっていない。開始まで3分以上も残っている。
おそらく今回の入寮祭で一番注目されている試合だろう。第一試合では乙姫が、第二試合では黒崎が圧倒的な実力を見せ敵を秒速KOしたのだから。
モニターから目が離せない。二人の戦いはもうすでに始まっているかと思えるほどに会場に満ちた殺気の様なものがモニター越しに伝わって来るのだ。
殺気の主はおそらく乙姫。女子なのにと思えるほど刺々しく鋭い殺気を放っているが、黒崎はそれを気に留めようともしない。彼からは正体不明、という言葉が一番しっくりくるほど意味の分からない。気持ちの悪いなにかが漂っているような気がする。
椋もこの試合を楽しみにしていた。第一試合では乙姫の妨害により彼女自身の能力も見ることができなかった(なにかが爆発したという事ぐらいだろうか)し、黒崎は一度しか能力を使わなかった上に結構な速度だったため移動能力に関係する何かという事しかつかめていない。
個人的には乙姫に勝ってほしい。仲がいいとまではいかないが他寮で唯一の知り合いだし。
と、くだらない思考を張り巡らせているうちにとうとう司会者の声が会場に響く。
『第四試合!朱雀VS玄武、開始前からピリピリと伝わってくる何かがあります!これは期待できそうです!では、開始!』
〇~〇~〇~〇
先に仕掛けたのは乙姫の方だった。
彼女の右小指に装着された指輪の様なものが、沙希の結晶光よりも淡い、本物の炎のような結晶光があふれだす。
その光は彼女の手の周りをくるくると回りながら二つの赤い翼を広げる。鳥類の召喚系か、何の鳥かはわからないが大きく羽ばたき会場を一周ぐるりと回る。
鳥の通った軌道は大きく燃え盛り会場を赤く染め、それだけで観衆を一気に沸かせる。
その後静かに乙姫の小指に止まって気がついたが、思ったより鳥は小さい。
「鶯かしら…。でもちょっと小さいわね。」
とモニターを見る椋の横で山根がボソッとつぶやく。
鶯の一般的なサイズなんて知らないが彼女がそう言うならそうなんだろう。と、頭の中で疑問を自己解決し、はあ、とだけ返しモニターに目を戻す。
しかしこの小さな鶯が須山であれほどの爆発を起こしたのかと思うと少々驚くというか、見た目によらず結構ワイルドな感じがする。
最初の方は乙姫にじゃれ、チャッチャッと鳴くていたが、その後黒崎を猛禽のように鋭い目つきでにらみながら、聞き覚えのある、ホーホケキョ!と鳴き声をあげ、一気に黒崎の胸元へと向かって猪突…鶯突猛進、いやまぁとりあえず炎の尾を引きながら突進していったのであった。
火曜からまたテストです……
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