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早くテスト期間が終わってほしい…

感想、評価もらえたらテスト念今日の励みになるかもしれません!

 椋は次の試合を観戦するため、一度自分の控室に戻ることにした。

 部屋にはやはり山根が居座っており、どこから取り出したのかお茶を啜っている。

 「してやられたね。試合は見れたの?」

 と言う山根の質問に椋は首を横に振ることしかできなかった。

 「けどさすが爆殺姫って感じね。今回の出場者の中でも一番強いんじゃないかしら。」

 そんな山根の発言にも含まれる、《爆殺姫(ばくさつひめ)》という単語が少し引っかかる。

 「山根さんはあいつのこと知ってるんですか?」

 「知ってるも何も、彼女結構な有名人よ?金持ちのお嬢様であのルックスだからよく知らない男に絡まれちゃったみたいでね、来るたび来るたび能力で吹っ飛ばしたとか。そこでついたあだ名が爆殺姫。で、彼女いろんな武道をたしなんでてね、しょっちゅう上位に顔出す子だったから、そっちでまで爆殺姫って呼ばれるようになっちゃったみたいよ。」

 「何かどっちも悪いような気がしますね…。」

 「彼女からしたら正当な防衛よ、ちょっとやりすぎだけどね。まぁでもこれで君にあったハンデは消えちゃったわけだね。」

 「いや、まぁそうなんですけど…。あの調子じゃ須山って奴戦えませんよ…。完全に戦意失ってるって感じでしたね。」

 椋の発言に山根が意外そうな顔を浮かべて言う。

 「そんなにひどかったの?」

 「全部見たわけじゃないんで何とも言えないですけど、たぶんものすごい一方的な戦いだったと思います。」

 「一方的ねぇ……。まあ、もうすぐあなたと戦うわけだから時が来たらわかることだと思うけどね。」

 「あんまり女性とは戦いたくないんですけどね…。向こうが何か悪いことをしたわけでもないし…。」

 正直想像がつかないのだ。自分が乙姫と戦うところが。いっその事降参したくらいの気持ちだった。そんなことのために能力を手に入れたんじゃないのだから。


〇~〇~〇~〇


 「そういえば、そろそろ次の試合始まるんじゃない?」

 そういって山根がテレビの電源を入れると、先程と同じように金田と黒崎が向かいあっている。

 画面越しでも向こうの緊張感が伝わってくるような気がする。何かわからないこの異様な気持ち悪さも、だ。

 それを金田も理解しているらしく、金田の足が少しだけ震えているような気がする。

 そんな中、司会者の声が室内のスピーカーから聞こえてくる。

 『第2試合、玄武VS白虎開始します!』

 その声と同時に、両者は勢いよく走りだした。


 二人はほぼ等速でぶつかり合い、激しい攻防が繰り広げられている。

 白虎寮の金田は、近接格闘を得意にしている様で相手を常に防御に追い込んでいる。

 結晶光が見られず、能力は展開していないようなので、これが素の実力かと思うと驚きを隠せないほどの攻撃の速さだった。

 黒崎の方もそれをすべて的確にガードしているのだ。見方を変えればいつでも反撃できるのかもしれない。

 たった十数秒のぶつかり合いを見ただけで、椋と山根の意見は合致していた。

 「玄武寮の子の勝ちね…。」

 「ですね…。これ以上続けても無駄ですよ……。金田の方もそれに気付いてるというか…無茶な戦い方ですよね。」

 自分でもこの表現がしっくりくると思う。黒埼は汗1つ掻かず冷静に金田の攻撃を受け流していく一方、金田は息も絶え絶えと必死に攻撃を続けている。


 黒崎が金田の攻撃をステップを踏みスッとよけ、自分の左拳を金田の腹部にめり込ませる。金田自身もそれを覚悟していたようで腹に力を籠め、必死にその一撃を耐えていた。

 

 一撃なら耐えれたのかもしれない。

 不意に二人の体が同時に消え、その場から1・5mほどの高さで90度回転した状態の二人が再び現れる。そこに漂う鈍色の結晶光からおそらくどちらかの能力だと思われるが、この状況ならば黒崎の物だろう。

 空中で地面に背を向けた金田、そのさらに上に拳を構える黒埼がもう一度左手を引き、振り下ろす。

 それほどの高さではないが、勢いよく叩き付ければ簡単に人は気絶するものだ。

 地面に叩き付けられた柄な少年の体から異常な音が上がるが、それにまったく興味を抱かないかのように、黒崎はフィールドを去ろうとしていた。

 もちろんと言ってはなんだが、スタジアムの固い地面が金田の体を拒絶し、彼の意識を奪っていった。

 

 『白虎寮、金田選手の気絶を確認、勝者玄武寮代表、黒埼泥雲選手です!!』

 そんな司会の軽い言葉と共に、OLの自動修復により少しだけ削れた地面もすべて元通りになっていく。

 それから数十秒後に意識が回復した金田は、観客に一礼するとすぐにフィールドを去っていった。

 そんな中先に扉の前に着く黒埼だったが、この時椋は見逃さなかった。扉を開け会場を去る時の黒崎の無表情だった顔が、悪意に満ち溢れたどす黒い笑みに歪んでいたことを。

 

 

 


 

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