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「では少し見ていてくれ」
片山はそういうと、大きく固そうな拳を振り上げ、地面を思い切り殴り付ける。
結晶を使ったのかどうかは定かではない。
しかしドォォンと音をあげ、拳ひとつで地面を粉砕したのだけは事実だった。
片山の拳の二倍ほどの大きさの穴が地面に穿たれている。
「まぁ、これくらいでいいだろう。とりあえず修復の効果を見せれればいいだけだしな。ほかに何か質問があるやつはいるか?」
という片山の発言に会場は静まり返るが、それならばといった感じで、椋が立ち上がり質問を飛ばす。
「フィールドの外に出たらどうなるんですか?」
「良い質問だ。フィールド外に出ることはできるが、外で壊したものは元に戻らない上に、一度でも外に出れば人体への治癒効果は一切なくなってしまう」
考えようによっては恐ろしいルールではあるが、それを問いただしても返ってくる答えは予想がつく。
「なるほど……ありがとうございます」
と一言礼を言うと寮は再び着席する。
「ほかに質問がないならこれにて終了するぞ?」
誰からも返事らしきものがないのを確認した片山は、リザインを宣言した。
黄色い空間が収縮するように外側から元の風景に戻っていく。
椋達も確認のため机の一部を傷つけておいたのだが、黄色がすぐ去っていくと同時にそれも、まるでなかったかのように元通りになっていた。
黄色が完全に消えると、壇上の穴もきれいに消えていた。
効果を皆に見せつけ、この寮土戦の説明が終了した。
決してわかりやすいと言える説明ではなかったが、どうせこれから経験していくのだ。慣れていけばいい。
契がこちらに戻ってくると、
「アンタ何のために前に出たの?」
真琴が本当に何も活躍していない契に言った。
「僕が知りたいくらいだよ。ハハハッ…」
と苦笑いを浮かべつつ答えていると、壇上から片山の声が聞こえてきた。
「すまない。寮土戦の説明に時間を割きすぎた。今から皆にくじを配る。引いてほしい」
周りから質問が飛んでくる。
「何のくじですか?」
「入寮祭だよ。当たりが出た1人がこの全麒麟寮の新入生代表だ」
そういうと各自のOLからデスクトップが現れ、そこに表示されている指示に従い皆がくじを引いていく。
椋達も、先程、寮を決める時とは違い、くじ引きの画面が表示されている。
ホールの皆がどんどんとくじを引いていく中、椋達5人もくじ引きを開始した。
「はずれね」
と真琴。それに続くように懋も「ハズレちった」と。
「僕もハズレだ…。いや、むしろこのくじ引き、ある意味でハズレが当たりなのかもね」
その後、沙希もハズレと表記された画面を見せてくる。
椋だけくじの抽選が異様に長い。
ほかの人より一分ほど遅れ結果が表示される。
「やばい……当たった」




