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「で!…でも、なんで新田君も懋も、昨日今日会ったばっかりの契が永棟氏の親族だってわかったんだ?ただの同姓かもしれないじゃないか!」
と半ば叫び気味な椋が尋ねる。 そんな椋を落ち着かせるような優しい声で新田が言う。
「まず、第一にこの場に立っている。この学校は思ってるよりレベル高いんだよ?偶然とはおもえないかな」
彼に続くように懋が言う。
「第二に、契っちは入学式の時椋と同じGってアルファベットの入った腕輪をつけてただろ?あれは本当に特別な試験なんだ。普通のやつが受けれるわけがないって思ったわけ!」
そうなのか、と心の中だけで呟き、言ってくれればよかったのに、と内心で思う椋なのであった。
お互いの理解を深め合ったところで、そろそろ本題にはいる。
契にこれまでの大まかな話をし、従来製とそれ以外の物の違いを説明してもらうことになった。
「まず、人工結晶には一つに必ず一つ結晶と呼ばれる所以でもあるんだけど、コアがあるんだ。従来製とそれ以外とではそもそもそこに差があるんだ」
そういうと、契はポケットから2つの指輪を取り出し、他の3人の前に置く。1つはクリアな本物の宝石のように輝いているが、もう一つは光が鈍く、プラスチックのおもちゃのようにも見えるほどだ。
「みんなはこれを見てどっちが従来製なのかわかるよね?」
契の言葉に3人が同時にプラスチックのようなコアを持つ指輪を指差した。
「そうだね。そっちが従来型だ。僕の家の会社、アーティファクトアーツ社以外で作っている人工結晶はすべてこれと同じようなコアしか使われていない」
「それってどういうことだ?」
と椋が疑問を飛ばす。契は少々考え込むみ、椋にもわかるような説明を考える。
「つまりだね、人工結晶のコアはうちの会社でしか作られていないんだ。そして他の会社に回すコアはうちの会社の製品を作る上でできたゴミみたいなものなんだよ」
「製造方法は公開されてないってことかな?」
という新田の疑問に契が首を横に振る。
「ちがう、だれにも作れないんだよ。蒲生さん以外には絶対作れない」
最後に出てきた名前に心当たりはなかったが、それが誰なのかは何となくわかった。《戦車》の正の能力者だろう。
契はその存在を知っているのだろうか?彼に《愚者》のことを打ち明けても大丈夫なのだろうかと考え込んでしまう。
その間にも契の話は続いていた。




