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復帰した真琴と少し話をし、とりあえず椋が優奈を襲っていたという誤解は解けたようだ。
「俺は辻井椋って言います。よろしくね優奈ちゃん。」
優しい声で接するが、真琴がこっちをにらみつけてくるため、微笑みが苦笑いに代わっていく。
「こちらこそ姉ともども、よろしくお願いします。」
やはりできる子だなぁ…などと思っていたらしばらく忘れ去られていた沙希がすっと顔を出してくる。
「ねぇ椋?このお二人は?」
「ああ、ごめん沙希…完全に置いてけぼりにしてたね。」
「うん…。正直今でも置いてけぼり食らってる気分だけどね。」
「順を追って説明するよ。とりあえず…移動しようか。」
ここは病院の出口付近である。先ほどの衝突でできた野次馬はほとんど消えていったが、やはりちらほら人がいるため、すぐさま場所を移す。
ちょうどロビーに4つのイスと円形のテーブルがあったので、そっちにむかう。
席順は椋の右隣に沙希、椋の正面に真琴、真琴の右隣に優奈、といった形でテーブルを囲み、昨日沙希が帰った後の出来事を語っていく。
優奈も知らなかったようなので、興味津々で耳を傾けている。
一昨日の夜のことを真琴に話したのは、ほかの二人には説明しなかった。
沙希には自分の口からちゃんと伝えたいからだ。
あらかた語り終えたところで、沙希の自己紹介がすんでなかったということで、ぱぱっと済ませる。
「私は七瀬沙希。椋ともどもよろしくね。」
といっても今日以外に合うことなんてないだろうな…。などと思いつつ、世間話に華を咲かせた後に、その日は解散となった。
遂に明日は卒業式である。




