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教員の先導を受けながら、椋達を含む250人もその2000人の人たちがいるアリーナへと行き、5人は右から契、沙希、椋、懋、真琴の順に並んでイスに腰掛けていく。
あまりにも広い会館。走っても端から端まで結構時間がかかりそうなほど大きく、周りを見ると、今椋達が立っている一階以外にも、二階、三階にもスタンド席が設置されている。あの席を合わせたら、この学校の生徒が全員収容できるのだろうか?と疑問に思っていた。
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その後、椋達と同じように200人ほどのグループが何組も何組も入ってくる。もう途中で数えるのをやめてしまうほどに。
ようやくその人の流れが止まる。と、会館の一番奥の講壇上に一人の男が現れる。椋からの位置では顔が確認できないほど小さいが、親切なことに。各所に設置されている液晶モニターによりその顔を確認することができた。
先日船の中で見た。深く皺の刻まれた顔、髪の毛は存在せず、顎にはひげを蓄えている、この学校の校長、村本重信だ。
彼が壇上に上がるとともに、騒いでいた周りの新入生たちはメリハリをつけるように、誰一人としてしゃべらなくなった。懋でさえも黙り込んでいるのだ。彼独特のオーラというか、存在感のようなものがそうさせているのかもしれない。
『アイツは《魔術師》の正を宿しているぞ』
と突然フールがこちらに話しかけてくる。
(校長か…回収がめんどくさそうだね)
『それ以前にアイツは強さの桁が違う。真剣に勝負しても1分持ちこたえられる自信を持てない…』
(いくらなんでもそれはオーバーなんじゃ?だって大人ってことはナチュラルスキルは持ってないってことだからさ)
『桁が違うんだ。そんなこと気にならないほどにな。しかし《魔術師》がどうやってあそこまでのエネルギーを蓄えたんだ…』
と最終的にぶつぶつ言いながら自分だけの世界に閉じこもっていくフールを放置して、校長の話に耳を傾ける。
フールの話に気を取られたせいで、半分以上耳に入っておらず、各校恒例の校長の長話的なイベントはパッと終わってしまった。
「ではこれより!我が校の学生寮制度について説明させてもらう」
そういいながら村本が手を大きく振ると、そこに大きな円状の何かがポリゴンで形成されていく。
「これはこの学園の全体像だ。この円の中央には職員塔、堀を隔てたその周りには校舎群が続いている。そしてその奥、余っている土地すべてが学生寮となっている」
1学年にこれだけの人数がいて、尚且つこれより人数の多い2学年分の人間を収容しようと思えばそれぐらい必要なのだろう。そう思っていると、村本が続ける。
「今から諸君には5つある寮のうちどれに入るかをくじで決めてもらう。どの寮に所属するかはこれ以降特別な事情が存在しない限り変更できない」
そんな予想外の発言に椋は固まってしまった。
(クラスが同じでも、寮が違ったら意味がない……)
隣に座る仲間たちを見ると、冷静な真琴以外の3人も同じような顔をしていた。




