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椋はそんな放送を聞き、とりあえずはそこまで危険ではないと判断し、胸をなでおろす。
ビィーーーと右腕に装着されていた腕輪が大きな音をたてて鳴る。
五人がほぼ同時に腕輪を胸の高さまであげ、それを確認する。
椋、沙希、契の腕はではGと、真琴の腕輪ではAと、懋の腕輪ではDと言う文字が輝いている。
再び船内放送が入り次の指示が出る。
【ご自身が装着なさっている腕輪に表記されているアルファベットの部分をタッチしてください、全員が完了するまで次には進みませんのでどうかご協力をお願いいたします。】
なぜそんなことを念押しするのか椋には理解できなかった。
「人工結晶だね」
と契が今更ながらに腕輪を見つめ、真剣な眼差しでそう言った。
契はそのまま文字を軽くたたくと、腕輪が光を放ち契の全身を包み込んでいく。
人工結晶から放たれた光が契の体内に吸収されていくのを確認し、椋を含むほかの4人も契と同じ行動をとる。
沙希、真琴、懋の体を光が包み込み契と同じように体内に吸収されていく。
しかし、椋にはそれが起きなかった。何度触っても結晶が展開を開始しない。
理由には心当たりがあった。フールがソルスエネルギーの生成を妨害しているからである。
椋は自身のナチュラルスキル、ソルスエネルギーを使った人口結晶での能力、そして《愚者》の能力を使えるわけだが、自身のナチュラルスキルの特性と、《愚者》の能力があまりにも大きすぎるため、複数を同時に使うと能力が暴走してしまう可能性があるのだ。
ゆえに幼少のころ《愚者》によって上記のうち2つを一時的に使用不可にしたのである。
この椋の何度も結晶をたたく行動を見た契と懋は不思議そうな顔をし、椋の顔を覗き込む。
この二人は《愚者》の存在も、一か月前まで椋が無能力だったという事も知らないのだ。
この二つを知られてもお互いに得することなんてないので、とりあえず一度《愚者》に相談を持ちかける。
(フール、僕には人工結晶の使い方はわからないけど、とりあえず君の封印を解いてくれないか?)
素早く、彼の返事が返ってくる。
『了解した。今のお前ならこっちの方も段階的に開放していけばいいだろう。』
(ありがとう。)
そう言っていると、電流のはじけるような音が響きが脳内に響き渡った。




