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田口を連れ展望デッキの3人のもとへ向かう。
さすがにその移動に『光輪の加護』を使うわけがなく、徒歩でゆっくりと向かう。
歩きながら田口と緊張しつつも話を続けていると意外なことが分かった。
彼も式の違和感に気付いて、彼なりの警戒をしていたそうだ。5人と聞いたとき、前々から円の中心になっていた4人の所に行こうかと思ったが、気がついたら消えていたので、もうあまりものでいいやと思い突っ立ていたらしい。
そこにその四人のうちの一人が声をかけたわけだが。
会場の雰囲気にのまれず、しっかり状況の判断ができる人なのだろうと思いつつ、その割にはチャラいなとも思いつつ、見た目と名前が一致しないなとも思っていた。
椋と田口は人ごみをかき分けようやく展望デッキに到着した。
待っていた3人は安堵の表情を浮かべ、こちらに駆け寄ってくる。
「アンタが遅いから失敗したのかと思ったじゃない」
「おかえり、椋」
「お疲れ」
と真琴、沙希、契が続く。
「ただいま。えーっと……彼は田…」
「田口懋デス!皆さんよろしく!」
と椋の言葉を遮るように、田口が自ら自己紹介を開始した、いや、実際これが最も理想的なのだが、この軽いキャラをみんなが受け入れてくれるのか不安だったので、椋の口から自己紹介をしようと思ったのだ。
実際他の3人は少々驚きつつも、それぞれがあいさつを交わしていく。
「えーと、まこっちゃんに、さっちゃんに、ちっくんだね!」
紹介が終わり、田口が確認するかのように、それぞれをあだ名で呼ぶ。
「お願いします。ちっくんだけはやめてください」
という契の切願を受け、彼はどうにか《ちっくん》を回避することに成功した。
「じゃあ、やぶり?」
「せめてちぎってくれ!」
と契と田口のコントを見て笑う3人だった。
「みんながそうなら俺のあだ名はなんなんだ?」
と椋が契みたいな不思議な呼び方はされたくないが、少し気になったので聞いてみた。
「え?椋は椋じゃないの?」
と田口が至って真剣な顔で椋にそう言ってきたので、納得してしまったが、正直に言うとあだ名をつけてほしい椋なのであった。
そんなしょうもない話を続けていると、次の船内放送が流れる。
【5人グループの完成を確認いたしました。ではこれよりゲームを開始いたします。ルールは至って簡単。チーム対抗で一度でも攻撃を受けたものはリタイアもちろん結晶は人工天然問わず使用可、最後に一人でも残ったチームには褒賞として可能な限りでですが一つだけ願いを聞いて差し上げます。このゲームはあくまでレクリエーション、このゲームでの敗北が今後の成績などに影響しません。存分に楽しんでください。】




