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球形液晶上を文字が輪っかを作ってぐるぐるとまわっている。
10秒ごとに文章が1つ追加されて行くようだ。その数秒後に船内放送でも同じ内容の文面が読み直される。
【これからあなた達には5人で1組のグループを作っていただきます。人選などは自由、人数はあぶれないようにできています。】
先程までのにぎやかなムードは少し小さくなり、みんな動揺した様子でグループを探している。
椋達も今のままでは4人なのでもう一人探すことになった。
こういう時こそ真琴の出番である。
「『可視化の片眼鏡』!」
彼女の周囲を淡い緑色の光が包み、それが左目に集結、そのままフレームが緑の片眼鏡を形成する。
能力の発動から、間髪入れずに彼女が言う。
「会場、中央の液晶の近く、飲み物が置かれてる机の近くにいる深い茶色の髪の男子、癖のあるそこまで長くない髪の毛ね」
それだけを聞くともう他の3人の前から椋は消えていた。
彼女の能力により、この会場の中で今だけ手を組んでもよさそうな人を探したのだ。
真琴の『可視化の片眼鏡』は正確には語られていないが、対象のエネルギーの流れだとかを見ることができるらしい。その体内のエネルギー量が多いほど、基本的には能力の使用などにも慣れているとのことで、会場の中でそんなやつを探したのだ。
『光輪の加護』を高速展開し、ほかの勧誘が入る前に、その茶髪少年に声をかけようと言う計画だ。
目的地を球形液晶の近くにし到着と同時に能力の解除する。そのまま走って茶髪少年のもとへ行く。
目の前に突然人が現れて自分の方に向かってきたら誰でも怖いだろう。
ある程度距離を開けて跳躍はしたつもりだ。
少し息を上げながら、少年に言う。
「良かったら一緒にグループを組みませんか?こっちは4人いるんですけどどうしてもあと一人見つからないんです」
できるだけ丁寧に茶髪少年に接する。ここで感じを悪くしてもこちらに得はない。
「あ、おけーだぜ!オレも探してたとこだし!!」
見た目道理に微妙にチャラいような気がするが、真琴が選んだ人だ、まず間違いなく強いんだろう。
彼に向かって右手を差出し、握手を求める。
こちらの要求にこたえるかのように彼も右手を伸ばしてくる。
「辻井椋って言います。よろしく!」
「田口懋!よろしく!」
お互いの手をきつく握りあい、勧誘が成立した。




