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このアルファベットは所詮飾りにすぎない。これがあるからなにかが変わるというわけではない。
真琴がAの試験を受けた時、実際はBの試験を受けに行ったのだが、Aの試験という道が示されたため、それにしたがっただけらしい。彼女にとってAを受けたのは単なる腕試しにすぎなかったのだ。
船が一度だけ静かに揺れる。それに続くように、船内アナウンスが流れ船が遊泳を開始したとの事だった。
椋、沙希、真琴、契の四人は、群がる入学生たちの中からなんとか抜け出し、一度会場から離れ事にした。このままでは人は群がるばかりだと思ったからだ。
展望デッキに移動した四人は、本当になんとか逃げられたといった様子で、きっちりと着こなしていた制服は乱れ、少々汗もかいてしまっている。
潮風はまだ少し冷たいが、制服の上着をきていたため、気になる程度ではなかった。
息を荒らげていた椋が一度大きく深呼吸をし、
「真琴」
と1人このパーティーの違和感に警戒している彼女の名前を呼ぶ。
彼女はコクンと首をたてにふり、椋もこの違和感に気がついている事を確認した。
「なにかあるわね……」
彼女の発言に他の二人の顔も引き締まる。
「何かって言うのは?」
契が真剣な表情で真琴に疑問を投げ掛けた。
「それがわかってるなら苦労しないわよ……」
真琴のもっともな反論に返す言葉がなくなって、契が黙りこんでしまう。
しばらくの沈黙が展望デッキが包む。
皆がそれぞれに対策を考えているのだろうが、何が起こるかわからないなか、それの対処を考えるというのは無茶な話だ。
沈黙を破ったのは沙希だった。
「とりあえず…さ、そのなにかが起こるまでは四人固まって行動しよ。絶対な離れないようにしといたらもしもの時対応しやすいでしょ?ずっとここにいるのも不自然だし一旦会場に戻らない?」
という、とりあえず策ではあるが、今考えうるなかで、最も安全と思われる策だと皆の意見が一致したため、もう一度会場にむかう。
最後に椋がこの場を閉める。
「なにも起きないかもしれないけどさ、もしもの時は冷静に行動しよう。1人の時は絶対に危険なことはしないように……。それじゃあ…行こう!!」
そんな椋のテンプレート的な台詞に励まされた三人が、お互いで目配せをし、そのまま会場にむかって歩き出した。
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