額
俺は河原の広い芝生の上に座っていた。朝だ。冷たい朝だ。
芝生は濡れていた。俺はあぐらをかいて、濁った川の流れを見つめた。
俺は行き詰まっていた。夜は眠れなかったし、苛立った気分が今でも収まらない。
俺は汚いビル群に挟まれた場所で一人、悩んでいた。
ベリッと、何かが破れる音がした。
俺は違和感を感じて額に触れた。
額が割れていた。
血がごぼごぼと溢れだした。俺は目に、口にかかる自分の体液を乱暴に払った。周囲に血が飛び散る。
何度も何度も顔を手で拭いた。
そして、何かに触れた。
緑色の生暖かい物が額から生え、目の前に幾筋も垂れてきていた。
俺はそれをつかんで、思いきり引っ張った。思わず、うめき声を漏らした。
俺の額から植物の根が生えている。
根は俺の目の前で勢いよく伸び、地面に潜り込んだ。俺は頭から倒れた、俺の体は激しく地面に叩き付けられる。
根は地面に根付いていく。
意識の朦朧とした俺は、体に無数の切れ目が入っていることに気付いた。
あっ、と叫んだときにはもう遅かった。
俺の体はまっぷたつに裂け、巨大な双葉が中から顔を出した。血が滝のように降る。
巨大な植物は、俺の血をジュースのように勢いよく飲み、更に育った。
捨てられた種子の「さや」である俺は、まあいいか、と思いながら2つに別れた体をうごめかせた。
《了》