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紅い果実  作者: 酒田青
再び紅い果実に類する幻想ホラー集
42/58

 俺は河原の広い芝生の上に座っていた。朝だ。冷たい朝だ。

 芝生は濡れていた。俺はあぐらをかいて、濁った川の流れを見つめた。

 俺は行き詰まっていた。夜は眠れなかったし、苛立った気分が今でも収まらない。

 俺は汚いビル群に挟まれた場所で一人、悩んでいた。

 ベリッと、何かが破れる音がした。

 俺は違和感を感じて額に触れた。

 額が割れていた。

 血がごぼごぼと溢れだした。俺は目に、口にかかる自分の体液を乱暴に払った。周囲に血が飛び散る。

 何度も何度も顔を手で拭いた。

 そして、何かに触れた。

 緑色の生暖かい物が額から生え、目の前に幾筋も垂れてきていた。

 俺はそれをつかんで、思いきり引っ張った。思わず、うめき声を漏らした。

 俺の額から植物の根が生えている。

 根は俺の目の前で勢いよく伸び、地面に潜り込んだ。俺は頭から倒れた、俺の体は激しく地面に叩き付けられる。

根は地面に根付いていく。

 意識の朦朧とした俺は、体に無数の切れ目が入っていることに気付いた。

 あっ、と叫んだときにはもう遅かった。

 俺の体はまっぷたつに裂け、巨大な双葉が中から顔を出した。血が滝のように降る。

 巨大な植物は、俺の血をジュースのように勢いよく飲み、更に育った。

 捨てられた種子の「さや」である俺は、まあいいか、と思いながら2つに別れた体をうごめかせた。


 《了》

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