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紅い果実  作者: 酒田青
童話的小品集たち
41/58

ヘビさんどこ行くの

「ヘビさんどこ行くの」

 わたしは枯れた草の上を泳ぐように進む、赤いヘビさんに声をかけました。本当に、本当に、鮮やかな色でした。

 ヘビさんはくねくねするのをやめて、鎌首をもたげました。そして、閉じた口の先にある小さな穴から長い舌を出しました。

「やあ、みつ子ちゃん。ぼくはおうちに帰るんだよ」

 ヘビさんのおうちはすぐそこです。わたしは乾いた穴の入り口までついていきました。

「じゃあ、さようなら」

 わたしたちはそこでお別れをしました。ヘビさんは穴の中にするすると入り、わたしは草むらに向かって歩きました。

「ねずみさんどこ行くの」

 わたしは足下をすばやくかけていく、大きなねずみさんに声をかけました。本当に、本当に、大きなねずみさんでした。

 ねずみさんは太った体をゆっさゆっさと揺らして振り向きました。ミミズのような尻尾を引きずっています。

「やあ、みつ子ちゃん。ぼくはごちそうを食べに行くんだよ」

 ごちそうは向こうの丘の上にありました。わたしはねずみさんについていきました。

「じゃあ、さようなら」

 ねずみさんはごちそうに向かってかけていきました。仲間たちは大勢、ごちそうにむらがっています。

 ごちそうはわたしのおじいさんでした。おじいさんは骨の一部をのぞかせながら、もう動かない顔をわたしに向けています。おじいさんが動かなくなってから、もう十日になります。この古い家の広い庭で、おじいさんは突然倒れたのでした。

「みつ子ちゃんどこ行くの」

 さっきのヘビさんがわたしの隣をはっていました。ヘビさんは大きな体を見事にくねらせながら、私にすりよりました。

「わたしは行くところが無いのよ。だっておじいさんが死んでしまったのだもの」

 わたしがそう答えると、ヘビさんは長い舌をちらちらさせて、私に言いました。

「じゃあ、ぼくはどっちを食べればいいんだろう。あのねずみたちとみつ子ちゃんと」

 ヘビさんの目は輝いていました。私は答えました。

「わたしを食べて」

 ヘビさんはうんうんとうなずいて、舌をちょろちょろと泳がせました。


 《了》

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