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紅い果実  作者: 酒田青
童話的小品集たち
35/58

夢工場

 私たちが夜見る夢の出入り口には、夢工場があります。

 私たちは夢の中に入るとき、そこでチケットを買います。

 それからいろんな夢を楽しんで、夢工場の出口から目覚めの世界へと飛び発つのです。

 夢工場が何をするところかご存知ですか?

 おそらく、皆大慌てで夢の世界に飛込んで、大慌てで出ていくから、ご存じないでしょう。

 夢工場は夢を作り出す工場です。

 一度工場見学をしてごらんなさい。

 霧のようなうすぼんやりとした機械から、煙のように色とりどりの夢が流れ出しているところを見ることが出来ますよ。

 夢工場にはもちろん工場長がいます。

 他の工員はいません。

 工場長がどんな姿をしているか、知ってますか?

 あなたです。

 あなたのネガが、工場長をしているのです。

 色が反転した黒いあなたは、白い舌とどどめ色の歯を光らせて、あなたに笑いかけるでしょう。

 そして、「特別なご注文はありますか?」と聞いてくるのです。反転した声で。

 夢を注文出来ることを、あなたは知っていますか?

 とても素敵なことですよ。

 でも、もっと素敵な注文も出来るのですよ。

 夢に出てきたものを、目覚めの世界へと持ち帰るように注文出来るのです。

 素晴らしいでしょう?

 私はこれまで、銀色の兎や硝子細工の家をもって帰りました。

 誰にも見せられないけれど、それらの品物は確かに目覚めの世界にあるのです。

 いつか注文したお喋りをする入道雲も、どこかの暑い海の上で、口をパクパク動かしていることでしょう。

 ところで私は今日、夢工場で新しい注文をしました。

 今日の夢に出てきた素敵な黒いもの。

私のネガは、ニコニコと承諾してくれました。

 それが目覚めの世界に出て来るのが楽しみです。

 どうなるかしら。

 真っ黒な私の夢を、皆は喜んでくれるかしら。


 《了》

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