表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅い果実  作者: 酒田青
童話的小品集たち
34/58

風船乗り

 風船乗りが、大きな風船につかまって飛んだ。

 風船は虹色で、風船乗りも七色の衣装を身に纏っていた。風船乗りが握る風船の紐も虹色だ。

 地上ではたくさんの人がわあわあと、風船乗りを応援していた。風船乗りは手を振った。

 風船乗りと風船は、風に吹かれるままにふわふわと空を漂った。

 遥か下の地上では、氷砂糖を敷き詰めたみたいな岩山や、緑色の柔らかい絨毯のような森や、おもちゃ箱の中みたいな街が見えた。

 風船乗りは海に出た。

 上から見る海は、やっぱり大きかった。陸の外を風船から見渡しても、新しい陸が見当たらない程だった。

 その内、小さな島が見えた。風船乗りは、「これはいい」と思った。

 風船の紐につかまっている手が痛くなってきたから、暫くあの島で休もうと思うのだ。

 風船はうまいこと島の上に着いた。さあ、降りよう。

 だけど、降りられない。風船は相変わらずふわふわと空を漂っている。下に降りる気配はない。

 風船乗りは痛む手をちらちら見て、どうしようかと考えた。

 重しをつけるにも、下に降りなければ見付からない。

 はて。

 そうだ。

 風船乗りはにっこり笑って腰の荷物入れを探り始めた。こうすれば降りられる。

 風船乗りは、銀のナイフを風船につきたてた。

 パン。風船は破れた。

 風船乗りは落ちる。ゆっくり、ゆっくり。

 風船乗りは島のてっぺんの岩山に落ちて、ぺしゃん、潰れてしまった。

 次の瞬間、島から大きな風船が上がった。

 血のように真っ赤な風船だ。

 周りの海からも、たくさんの風船が上がり始めた。どれも血で作ったように赤い。

 ふわふわ。ふわふわ。

 空が風船で赤くなる。


 《了》

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ