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鶯が鳴く
私の右足のくるぶしには小さな赤色のドアがあって、時々キイと鳴って開く。
悲しいときはギイと鳴り、嬉しいときはパタンパタンと鳴る。
中から飛び出すのは小さな鶯だ。ホウ・ホケキョと鳴きながら、数羽が飛び発ち遠くに行ってしまう。そのあとはしばらく帰ってこない。
一羽だけ、ドアの内側に隠れている。お茶の色をした丸い小鳥はホウ・ホケキョと呟きながら後退り、ドアも閉じる。
その一羽は私の中を飛び回るのだ。足だろうが腕だろうが頭だろうが、スイスイと飛ぶのだ。
ホウ・ホケキョ、と頭の中から聞こえる。口を開くとよりハッキリと聞こえる。鶯が舌の上に蹲っているからだ。
だけどしばらく経つと、鶯は体の奥の方へと消えていく。
《了》




