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一列
夕暮れの角の民家の陰から黒猫が、一匹、二匹、三匹、四匹。
五匹、六匹、七匹、八匹。
寸分たがわぬ滑らかな動きで、黒猫が次々に角を曲がって一列に歩く。
僕の目の前で、黒猫の隊列が永遠の直線を描きながら行進してゆく。
小さな背中のうねりや垂れた尻尾はコピーのように正確に揃っている。
ナーオ。
列の前の方から猫の声が聞こえる。
その瞬間、猫たちの金色の目がぎらつく。
隊列は突如として動きを停止する。
ナーオ。
ナーオ。
ナーオ。
ナーオ。
黒猫たちが一斉に鳴き出す。
夕暮れは赤くなる。
黒猫の直線は道並ぶ民家の塀の成す黒い影の一部になる。
ナーオ。
ナーオ。
ナーオ。
影が鳴き出す。
影は真っ直ぐな線を描きながらうごめいている。
「あなた方の知らせを聞きたいのです」
僕は目の前に居並ぶ黒い影の一部に話しかける。
答えは―――。
「コノヨノオワリ」
影はしゃがれた声で言う。
影の中に見える一列に並んだ金色の目が輝く。
そして鳴き出す。
コノヨノオワリ。
コノヨノオワリ。
コノヨノオワリ。
コノヨノオワリ。
影の合唱はいつまでも続く。
《了》